背景の背景を訪ねて―美しい背景画を描くために大切なこと《前編》絵師ゆうろインタビュー
■ゆうろ式テクニック講座・その2
――最近の若い人だと、やはりキャラクターが描きたくて絵を描き始めた、という人が多いんですね。ある程度描けるようになった段階で、背景の重要性に気がついていく。でも、背景について勉強するといっても、どのように手をつけていったらいいかわからない……というケースが多いようで、そういう人に向けてのアドバイスがあればありがたいのですが。
やはり、とりあえず描くことですよ。描こうと思わないとだめです。根本的にそうです。やっぱり、描きたいと思えば、技術的な問題は後から簡単に入りますからね。
――キャラクターの絵はある程度のレベルで描ける人でも「キャラが背景の中に立たない」というケースが多いと思います。そこをうまく乗り越えるアイディアみたいなものはないでしょうか。
それは、元から絵を描くときに「初めにキャラクターを描く」という意識で描いているからではないでしょうか。絵を描くときに、「このシーンはこういう場面で、このキャラクターはこういうことをしているんだ」というように、シーンとして絵を作ることを考えると、背景とキャラクターは割りとなじんで描けると思うんです。キャラクターがあって、そこに背景を付け足す……という感じで描いていくと、やはり違和感が出てくると思いますよ。キャラクターと背景をあわせた一枚の絵として描く、という感じで作っていくといいんじゃないですかね。
――ひとつひとつ、パースをとって理論的に正しいものを描く必要はないんでしょうか?
不自然な絵にならないようにするには、カメラ位置と物の大きさといった大事なところは、間違えないようにしなければいけないとは思います。
――必要に応じて理論をきちんと裏付ける必要があるということですね。とはいえ、やはり理論を学ぶのは大変なんですよね。ゆうろさんはいかがでしたか。
結構好きでしたね。でも、背景は身につけるのに時間がかかるものなので、つまらなく感じてしまうところがある、というのはわかります。飽きないようにするためには、最初に絵の構想を決める段階では、手で全体をササッと描いてしまうのがいいと思いますね。自分の実際の作業もそうなのですが。大体のアタリが取れるようになるまでには、どうしても数をこなすことが必要だとは思いますけど。
――まず、描きたいもののイメージを決めることで目標を設定するということですね。構想のイマジネーションを得るためには何か工夫をされていますか?
写真や映画とか、外に行って風景を見たりはします。あとは、僕の場合はシーンから入ることが多いので、たとえば今回のぷらちなのトップ絵だと、「バレンタインをテーマに描いてください」という依頼がまずあったんですね。それで、ベタですけど、女の子がロッカーにチョコレートを入れているシーンにしようと思って。それでこうしてラフを描いて、校舎があって、ロッカーがあって女の子がいて……というシーンをどういう角度からどう撮ったら絵になるかなあ、ということを頭の中でぐるぐる回しながら考えていった。それができたら、必要な資料を探してくるって感じですね。
――資料と言うと、やはり学校の写真を撮ってきたんですか。
そうですね。最近では学校は許可を取るのが大変なので、一応、外から撮って。後は、学校の写真集ってありますよね。それを何冊か使ったりとか。
――こうした奥行きのある絵を描くときには、奥行きの感覚をうまくつかむために苦労するひとが多いと思うんですね。そこはどうすればいいでしょう?
奥行きは苦労しますよね。計算でできる部分と感覚でやる部分があるんです。この絵だと今、一点透視で描いてるので、縦と横についてはパースがないので計る必要がありますが、キャラクターの大きさと比較して、ロッカー1個の大きさは何センチだからここまでの長さが170センチくらいに設定しよう……と、そこら辺は全部計算で描けるんですよ。
(2008年1月8日、アミューズメントメディア総合学院にて収録)
インタビュー/構成:前田久
©KID・J.C.STAFF