怪人二十面相、電影ヲ震撼ス・前編――『二十面相の娘』原作者・小原愼司先生インタビュー

怪人二十面相、電影ヲ震撼ス・前編『二十面相の娘』原作者・小原愼司先生インタビュー

■アニメ『二十面相の娘』に向けて

――アフレコを見学されたということですが、アニメ版の感想はいかがですか。

ボンズさんとテレコムさんにはすごくいいものを作っていただけたと思います。僕らの年代だったら、テレコムといえば「『ルパン三世 カリオストロの城』を作っていたところ」というイメージなので当然期待はしていたんですけど、実際に観てみたらその期待よりも断然いいものでした。あまりに良かったものだから、Aパートを観ているときにはなんだか自分の作品と関係のないすごい新作アニメをみているような気分になってしまって(笑)、Bパートに入ってからようやく自分のマンガとアニメが繋がって比べられるようになってきたんですが、そのときは鳥肌がたちました。

―― 昔からテレコム作品はお好きだったんですか。

二十面相の娘

そうですね。最初からテレコム作品だと意識はしていたわけではありませんでしたけど、『カリ城』も『名探偵ホームズ』も『ルパン三世』(第2期)の終盤の、絵がちょっと普段と違っていて、とても凝った作りの回がテレコムさんの担当回だということをあとで知って、すごいスタジオだと驚きました。

――もともと探偵ものや怪盗ものが好きだったのでしょうか?

最近の作品はそんなに観ないんですが、ちょっと時代がかったものになると急に好きになりますね。それこそ、初めて江戸川乱歩の世界に触れたのも、テレビでやっていた団時朗さんが二十面相を演じていて、BD7が出てくるドラマ版『少年探偵団』だったりするので(笑)。そこから、学校の図書館にあった、ポプラ社の少年向け『少年探偵団』シリーズを読み始めて、乱歩を好きになっていったんですね。

団時朗
『帰ってきたウルトラマン』主人公の郷秀樹役などで知られる名優
市川崑
映画監督。実写・アニメ問わず多くの映像クリエイターに影響を与えた名監督。『新世紀エヴァンゲリオン』の極太明朝も市川作品のオマージュ。

――映像体験としての乱歩から、その世界に引き込まれていったんですね。他にも影響を受けた作品はありますか?

ちょうど「少年探偵団」ものにはまる時期を終えたあたりで、今度はジェレミー・ブレットがホームズ役を演じている『シャーロック・ホームズの冒険』がNHKで始まって、「これはカッコいい」ということで今度はシャーロック・ホームズを読み出しました。映像から入っているものが多くて、『犬神家の一族』も市川崑さんの映画から先に入っています。そのせいかわかりませんが、どうも現代を舞台にしているものには興味がもてないんですね。どこか大時代なものが好きなんです。

――それが『二十面相の娘』の舞台設定にも現われているんですね。

でも、実はマンガの方では「昭和何年」ということを細かく設定していないんですね。アニメ版では、しっかり時代設定がされるのですが。

―― ということは、アニメ版独自の解釈によるオリジナルの展開もあるのでしょうか?

シリーズ後半には、原作にはないオリジナルの展開がある予定です。アニメ版オリジナルのキャラも登場しますし。最初にフジテレビのプロデューサーさんがお話を持ってきてくださった段階で、ものすごくしっかりとしたアニメ化の構想があったんですね。なので、安心して、アニメ版のスタッフのみなさんに自由に作っていただこう、と。物語の着地点は変えないでください、とだけはお願いさせていただきましたが、そこさえあっていれば途中の展開やデザイン面はどう変えていただいてもかまいません。だから、僕も後半の展開は楽しみにしています。

――キャストのみなさんの印象はいかがでしたか?

まさか自分のマンガがアニメになるとは思わなかったので、「演じる声優さんは誰がいいか」なんてことも考えたことはなかったんです。でも、漫画のセリフを考えるわけですから、「このひとはこういう口調だ」というイメージは持っていたわけです。それが、チコ役の平野綾さんと二十面相役の内田夕夜さんの声を最初に聞いたとき、「このひとたちはこう喋るんだ」とお二人の声を聞いて納得させられた。

これは、音響監督はじめスタッフのみなさんが話し合って、すごくいいキャスティングをしていただいたんだと思っています。選んでいただいた声に違和感がなかったということは、スタッフのみなさんと僕の間でキャラクターに対する考えがぶれていないということだと思うので、そういう意味でもこのことはうれしかったですね。『コミックフラッパー』で、平野さん内田さんとも対談をさせていただいたんですけど、お二人の『二十面相の娘』に対する感想も、作者としてありがたいものでした。

小原愼司先生

――最後に、これから『二十面相の娘』という作品に触れる皆さんに向けたメッセージをお願いいたします。

10代くらいの読者だと、僕の作品は最初のとっつきが悪いと思うんです。僕は僕の世代感覚で生きているもので、どうしても僕と同じ世代のひとにいちいち説明しなくても通じてしまいそうなことは、説明しないで書いてしまっているところがあるでしょうから。なので、まずアニメを観てもらって、それで興味をもったら、マンガの方にも触れていただければうれしいです。ちょうど4月に番外編(『二十面相の娘 うつしよの夜』)の単行本が出るんですが、それから入ってもらった方が読みやすいように僕は思います。単行本8巻まで全部そろえていただくのはそれからということで(笑)。全部読んだあとで、アニメ版との違いを探しながらみていただけると、また違う楽しみ方ができると思います。どちらにしろ、損はさせません!

(2008年2月29日 ジェネオンエンタテインメント会議室にて収録)

インタビュー/構成: 前田久 平岩真輔

インタビュー後編はアニメスタッフに。おじさん!

二十面相の娘

アニメ『二十面相の娘』2008年4月12日スタート!

両親を亡くし、叔父叔母の下で暮らす少女チコ。世紀の怪盗・二十面相によって“盗みだされた”その時から、少女の運命の歯車が動き始める……!月刊コミックフラッパーに掲載された小原愼司『二十面相の娘』(全8巻)を、『鋼の錬金術師』のボンズと、『ルパン三世カリオストロの城』『もやしもん』を手がけたテレコムという実力派スタジオのタッグでアニメ化!!この春のアニメ界の話題を盗みます!!
放送はフジテレビで4月12日(土)深夜スタート!!その他の地域での放送や、詳しい情報はアニメ公式サイトをご覧ください!!
⇒『二十面相の娘』公式サイト(http://www.chico-tv.com/)

3月29日(土)東京国際アニメフェア2008でスペシャルステージ開催!

3月29日(土)東京ビッグサイトで開催される「東京国際アニメフェア2008」で『二十面相の娘』のスペシャルステージが開催されます!チコ役の声優、平野綾さんをむかえて、エンディング曲「Unnamed world」の生ライブなど盛りだくさんのステージを予定。ステージ観覧観覧無料です(ただし当日配布の整理券が必要になります)。TAF2008についてはウェブサイトをご覧ください。
⇒東京国際アニメフェア2008ウェブサイト

小原愼司先生の特別講義を開催!(参加無料)

アミューズメントメディア総合学院大阪校マンガ学科では、『二十面相の娘』作者の漫画家・小原愼司先生による特別講義を開催予定です!!開催日時など詳細は、学院ウェブサイトで近日お知らせします。!!学校体験のお問い合わせも受け付けています。
⇒アミューズメントメディア総合学院ウェブサイト(http://www.amgakuin.co.jp)

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©小原愼司・メディアファクトリー/「二十面相の娘」製作委員会





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