【ぷらちな】萌え4コマ、いいカンジ? まんがタイムきらら編集部インタビュー

まんがタイムきらら編集部インタビュー

■ヨンコマワーク

――4コマの場合は、ストーリーよりも感性的な部分が大きいので、作家と編集との意見のやりとりも難しいんじゃないかと思うのですが。

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小林 そういった感性の部分では、編集の意見を出しすぎることで、スピード感みたいなものが失われてしまう場合もあるので、それは作品を作る段階以前、作家さんと初めて会うところからが、もう勝負だという感じですね。この人はどういう作家さんなんだろう、どんなものを表現したくて、そのためにどういう手段を取る人なのかっていうのを的確につかめないと、なかなかうまくいかないんですよ。

篠原 その作家さんの伝えたいものを、編集もちゃんと解っていたら、「これを表現するのにこの4コマの流れでは読者に伝わっていないな」とか、「台詞や構図が今ひとつだな」とかいうのは、その都度、直していけますからね。そこに至ってない、表現したいことがまだ雲をつかむような段階で、読ませるレベルになっていない場合は1回リセットするしかない。4コマのネタだったら、その1本は没、ということで。

――掲載作家の男女比はどれくらいですか?

小林 これが一番難しいんです。始めた頃は本当に女性の方が多かったんですけど、今は5:5ぐらいになってきていますかね。

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©蒼樹うめ・芳文社

篠原 『まんがタイムきららキャラット』が創刊した当時は、意識的に女性作家さんを獲得していたんですね。二次創作のアンソロジー本で活躍されていた人とかを中心に。女性的な絵柄――女性作家さんが描いた「萌え」みたいなものに、かなり敏感に読者さんが反応されていたようでしたので、ここはちょっと攻めておいた方がいいだろうと。

そういう形でしばらくやっていくうちに、今度は『まんがタイムきららMAX』創刊の時期あたりになってくると、萌え絵柄の先端みたいなものを志向している読者さんも多いですから、純粋に男性的視点で萌えを描ける作家さんも獲得していますし。女性的な萌えを見て反応した男性読者さんの中の作家予備軍であったりとか、ウェブや同人をやっていた人たちが、『きらら』を見て自分なりの“萌え”を持ってきてくれます。

――読者も男女比は同じくらいですか?

篠原 読者は圧倒的に男性が多いですね。9:1くらいの男女比です。『ひだまりスケッチ』や『ドージンワーク』といった女性読者を比較的獲得できる作品でも、8:2ぐらい。そんなもんです(笑)。

――年齢層はどのあたりでしょう?

小林 創刊当初は20代後半から30代が中心で、最近では10代が増えています。

――30代が萌え系の作品を読むというのは、とにかく昼間疲れて帰ってきて、甘いものを食べるような感覚らしいんですね。同じ萌え系と括られるものでも、10代とかもっと若い人はライトノベルのような物語的な方向に行く。つまり、年齢が上がると、とにかく何も起こらない話の方がいいらしいのですが、実際にそういう反応はあったのでしょうか?

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篠原 確かに、創刊当初は、多少はアニメ・ゲーム寄りであっても、あくまで大きなベースはファミリー4コマ的な日常に根ざしている、というところが受けていたみたいですね。あまりにも突拍子もない話はそんなに起こらないというところが特に。

それが、だんだん読者の年齢が下がって来るにつれて、少しずつ変わってきたということはあります。「こういう設定もありなんじゃないの?」というチャレンジが出てきました。

――最後に、そういう状況の中で、これから4コママンガ家としてのデビューや、継続した活躍を目指す人にアドバイスをいただけますか?

篠原 そうですね。やっぱり、ウケを狙って読者に迎合して……みたいなことで小さくまとまったものにはあまり魅力を感じないかな。これは自分でないと描けないだろう、っていうのを何かひとつでもいいのでぶつけて欲しいと思います。絵柄でも良いですし、内容面でも良いですし。とにかく読者にこれを訴えかけたいんだ、というところをひとつ強く持っていてほしいなと思います。

小林 デビューして描き続けていくために大事なのは、描きたいものがあるかどうか、それから、描くことが好きかどうか、だけなんですね。言ってしまえば。ただ、逆を言えば、私が考えるマンガ家さんの才能というのは、絵が描けて面白い話が作れるのと同じくらい、続けることができるっていうのが重要なことなんです。だから、若い人たちにこういう言い方をすると非常に残酷かもしれないですけれども、ある意味才能ってどうにもならないところがあるので、そこは自分を信じるしかない。自分が本当にこれをやりたいのか、それをしっかり信念を持てるかどうかが重要だと思います。

(2007年6月8日、芳文社本社会議室にて収録)

インタビュー:伊藤剛(AMGマンガ学科講師)
構成:前田久 平岩真輔

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