「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」
第三回「無意味に見えるものって・・・」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
最近、ボクは無意味に思われがちなものを持ち歩くのに興味津々です。
無意味なものというのは、
- 電池の切れた時計
- ほぼ色のついていない透明なサングラス
- 充電をしていないiPod
- 契約の切れた携帯電話
- ほとんど物が入らないバッグ
などが挙げられます。
これらの魅力は、あくまで「無意味にみえる」ことにあります。
例えば電池の切れた時計をしていると、人に時間を尋ねられた時、答えられません。 きっと、尋ねた人はこう思うはずです。
「電池が切れちゃったんだな」
でも、それからも毎日、その時計をつけて歩いていたら、周りの人は
「なんで、この人こんな無意味なものを身に着けているんだ?」
と思うようになります。
これが実は非常に面白かったりします。 「無意味なもの」に疑問を持つということは、人は常に「物事に意味を求めている」という証明にもなるし、「時計=時間を知るための道具」といった具合に、「万国共通の決まりごと」が出来上がっていることを再確認できるのです。
「おいおい、アンタ何が言いたいんだ?」
というお声が上がる前に、なぜこのお話をしたかを説明させて頂くと、これらは「ものづくり」に応用できると思っているからです。
具体的には「物語をつくる」「絵を描く」際に、見た人皆が「意味のない」と思うものが存在していると、疑問を抱くということです。 疑問を抱くということは、その部分が強調されるので印象に残ります。
あとは、それを効果的に活用すればよいと思います。
例えば、主人公のしている動かない時計は「大事な人からもらった宝物」だとか、「不思議な力が宿ってる」とかですね。
なんにしろ「無意味」→「疑問」→「目立つ」ということです。 これは使わない手はないですよ。
ちなみに解決しない疑問は、視聴者にストレスを与えてしまう可能性があるので、疑問の多すぎには気をつけましょう。
「無意味」と思わせ「本来の理由」を伝えるのが最高! と偉そうに語らせて頂いたあとに何なのですが、ボクが持ち歩く「意味のないもの」には、特に真意はなかったりします。 単純に「個性あふれる新しいオシャレのカタチなのでは?」と思っていたり、意味のわからないものに反応する方々を見るのが好きな、ただの「ひねくれもの」です。
どうも、昔から一般的に見て「変なことをしている」と思われることが、好きなようです。
今回はちょっと企画作りから脱線してしまいましたが、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。お目に触れた方にとって、少しでも参考になっていれば、幸いです。
それでは皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)