「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」

第七回「作品の完成後は…??」

皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。 糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。

コルボッコロ設定

さて、唐突ですが「作品づくりの終了地点」ってどの状態のことを言うのでしょうかね?

最近気付いたことなのですが、作品の完成の時点ではマラソンでいうとまだ折り返し地点なんですよね、たぶん。 むしろこれからが頑張り時って感じです。

どういうことかというと、作品づくりは出産に近いと思っていて、産んだ後も一人立ちするまで育てなきゃいけないってことです。

いやむしろ、子供はある程度放っておいてもどんどん大きくなりますが、作品は放っておくとまったく大きくならないので子供以上に手がかかるし、作った以上は育てる必要があると言える気がします。

でも、作家さんは作品を創り込むことには全力を尽くすけど、その後の展開に関しては考えない人が、ボクを含めてたくさんいるような気がします。 次の作品創ることに頭を切り替えるのも大事ですが、それよりも産んだ作品を育てる方がもっと大事な気がする今日この頃。

いっそのこと法律とかで、「作品を創ったら数年は育てる義務がある」とかの制度が出来たら面白くなったりして……とか思っています。

ちょっと極論でしたが、せっかく創ったのだから大切にその後の展開も考えましょうってことですね。 一番良いのは、創る前からある程度その後の展開を視野に入れておくのがベストなんでしょうけど、やりたいことを優先するとなかなか両立は難しかったりします。

フランスにて

で、何故こんな話をしたかというと、先日フランスの映画祭に参加した時にそう思ったからなのです。

映画の場合、完成後に皆さんに見ていただくために

等、色々な方法が用いられていますが全ては映画の作り手以外のパートナーの力添えがあって始めて成り立つことです。

映画祭は作品の発表が大きな目的ですが、そんなパートナーを見つけるひとつの機会でもあるのです。 今回参加した映画祭でも、言葉も文化も違う国外の方々達に自分の作品を見せて様々な反応を生で見れた時、

「なるほど、少し作品が育ったんだな」

って実感しました。

不思議なことに、作品が育つと作り手も色々な部分で育ちます。

こういうのを繰り返して、物づくりってするものなんだなって、感じました。

今回のフランスへの旅の中では、

などなど数え切れないオモシロ事件と、さまざまな映画関係者さんたちとの出会いがありました。

フランスにて

全ては、作品を創作するところから始まり、そして作り終わった後もまだ作品はどんどん成長する可能性があって、それによって色々な経験が自分に返ってくるってことを知りました。

とても勉強になったし、何より楽しかったので、これからも作品を創り続けたいなって改めて思ったのでした。

今回は、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。

それでは皆様、またお会いしましょう。

いとそ けんじ

糸曽 賢志(いとそ けんじ)
糸曽 賢志
1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。 20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。 大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。 現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。 2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に 取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。 文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)


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