「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」
第十八回「アフレコ作業を終えて」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
さて、今回は前回に引き続き『コルボッコロ』のアフレコについて書かせて頂きます。
今まで幾つかアフレコというのは経験しましたが、アニメのアフレコに監督として参加させていただくのは初めてだったので、とにかく当日が楽しかったのを覚えています。
声優さん達を相手に、自分の演出意図やキャラクターの説明をして、いざ収録が開始。
大体10分くらいづつのパートに分けて、3回で一気に収録したのですが皆さんの演技が上手なおかげもあって作業は順調に進行しました。
アニメーションは効率を計るためだと思うのですが、実写に比べて細かく作業が分担されています。
声の収録も、最初に演技指導をしたら後は監督よりも音響監督さんがメインで進め、どうしても気になる箇所のみ、後からボクがお願いして収録し直す感じでした。
もちろん作品によって制作手法は異なるとは思うのですが、一つ分かったことは『コルボッコロ』はボクが一人でやっている作業が多すぎるので、非常に非効率だということです。
そういうのも含めて声の収録や音楽の作業を見ていると、きちんと商業的に短時間で効率よく制作できる体制を整えているのがわかり、今後の反省点と改善方法が見えてきた気がしました。
それにしても、キャラクターに台詞が入ると印象が随分変わります。
アニメーションは映像が出来た時点では聴覚を魅了する要素がまったくないため、音声や効果音や音楽が入ってくるのにしたがってクオリティがどんどん上がっていくのが見ていて楽しいです。
本編映像の方も、エフェクトなどを加えたり、手持ちカメラっぽい揺れなどを入れることで随分印象が変わってきていて、現在ネットで公開中のイメージ映像よりも見応えのあるものにはなってきている気はします。
以前も少し話しましたが、この作品は30分ほどのパイロットになっています。
「パイロット」というのは、長編映画などの企画を実現させるためのイメージ映像などのこと。
普通パイロット映像というものは3分から5分程度のCMっぽいものが多いのですが、『コルボッコロ』はあえてストーリー性を持たせ、ラストは次に続く感じにしています。
連載漫画を見越した読切漫画のようなものですね。
脚本やコンテの段階では、今まで編集者さんにお世話になりながら、読切漫画描いていた経験も生かしつつ構成したのを覚えています。
こういう珍しいパイロットを制作した目的は、知名度の低い新人作家に対してアニメ映画などを制作する予算を集めるのが非常に難しい現状の中で、少しでも具体的でインパクトの強いものを制作することで、映画業界の中での注目度を上げるのが目的です。
そういう意味では、このコルボッコロのパイロット版は今後の展開次第でどう発表されるのかわかりません。DVDとして販売される可能性や、ネット配信の可能性、テレビ放映の可能性などまだまだ未知数だったりします。
どちらにしても、また色々今後の展開が見えてきたら、ここでもお知らせさせて戴きます。
それでは、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。
それでは皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)