連載第五十二回「DREAMING MACHINE」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。 糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
毎日寒い日が続いております。 暑いのもあまり好きではないですが、寒いのも苦手なボクは、この時期非常に動きたくないです。 なのに決まって冬は仕事が重なることが多く、いつも複雑な気分。 定番ですが、布団に入ると出たくないです。
さてそんな中、ボクが現在参加させて頂いている劇場アニメのホームページが公開になりました。 「パプリカ」「東京ゴッドファーザーズ」などで知られる今 敏監督の新作劇場長編アニメーションです。
今回は「子供も楽しめるアニメーション」ということで、これまで現実世界を中心に大人向けの作品を扱っていた今 敏監督の作風とは一風変わっております。
実はボク自身10年以上前から今さんのファンなので、お誘い頂いた際は狂喜しました。。 仕事に入ったきっかけは、ある日マッドハウスのCOOと作品担当のプロデューサーから会いたいと急にお電話頂き、このプロジェクトに誘っていただいたからなのですが、何故自分が誘ってもらえたのか未だに不思議だったりします。
スタッフの方々も名だたる方ばかりで、皆様からは毎日教えてもらうことだらけ。 ボクは有難いことに下駄を履かせて頂いて「演出」という役職を頂いてはおりますが、基本やれることは何でもやらせていただいております。 一人で色々作っていたおかげで色々な分野の技術的な知識は多少頭に入っているので、やっておいて良かったと改めて思ったり。
物語の舞台は生き物の存在しない遥か未来の地球。 人の造ったロボットのみが生活しているという設定の中、ロビンとリリコというロボットが遥か彼方にあるといわれる「電気の国」を目指すという冒険活劇。
ホームページの作品概要を読んで頂けると書いてあるのですが、ボクが面白いと最初に感じたのは「目的があるから生きる」のではなく、「生きることによって目的が生まれる」という考え方です。 また、ファンタジーということで世界観を一から構築していますので、常に模索しながらの作業ではありますが日々とても勉強になっております。
今さんは「絵コンテ」時にレイアウトまできっちり仕上げるという制作手法なので、作業する際には絵コンテを正しく理解することが何より大事です。 つまり「きちんと読む」「きちんと聞く」という当たり前のことがスタートになるのですが、そういった当たり前のことが自分に欠如していることに気付かされます。 きちんと理解するためには、様々な知識も必要になるしそれを実現させるための技術もいるのです。
そんなわけで、ここ最近は今まで見てこなかったものや知らなかったものに選り好みせず手を出し、色んな価値観を学び始めました。 このコラムを続けて読んでいる方なら、ある時急にボクが小難しいことを言い始めたので「あれ?」と気付いていたかもしれませんが、すべての理由はこの仕事に影響を受け、作業をこなしていく為だった訳です。
なんにしろボクにとってはありがたい出会いだったので、次に繋げる為にも考えて作品を制作していこうと思っています。
あ、あとこの企画では現在スタッフを募集中です。ご興味ある方は是非HPからご応募ください!
実は、年末にスタジオが引っ越すことになっていまして、その作業にも追われていたりします。 見慣れた場所が変わるのは残念ですが、新しいスタジオになるのも楽しみ。
また追々この作品に関しても、許される範囲でご紹介出来ればと考えておりますので、ご興味ある方はご覧いただければと思います。
お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば幸いです。
では皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
⇒夢みる機械公式サイト(http://yume-robo.com/)
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008で北海道知事賞、第7回東京アニメアワード企業賞を受賞するなど、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)