「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」

第二十八回「制作費関連のおはなし」

コルボッコロ

皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。

最近ボクは、テレビアニメでオリジナルの企画でもできないかなあと考え、水面下で動いている毎日。 さすがにテレビでオリジナル企画となるとハードルも高いですが、徐々にうまくいけば良いなあと考えております。

さてさて、今日は前々回に引き続いてお金のお話をしようと思います。

作品を作る際にお金は必要不可欠ですが、そのお金を集める方法をご存知でしょうか。 一番一般的なのは「製作委員会方式」といって様々な会社がお金を出資して出資分にあわせて作品の権利を持ち合う委員会を作成するというものです。

分かりやすく言うと……、

仮に総製作費1億円の作品があったとして、レコード会社、おもちゃ会社、ゲーム会社、出版社、TV局が製作費の2割づつを負担したと仮定します。

この場合は製作費を出す代わりに、それぞれが作品の著作権を2割持ったり、各々の出資に見合った権利を持っていくようです。

例えば、レコード会社は音楽出版権を持ったり、ゲーム会社はゲーム化権を持ったり、ケースは様々。

要するにリスクを皆で分散しつつ作品を作ろうという方式ですね。

ただ、以前国のお役人さんとお話した時に聞いたのは、制作委員会方式は、内部で決めた内容を公開する必要がないため、外部からはどのように利益配分しているかわからないので、税金などを徴収する側からするとやりにくい部分もあるそうです。

そういった意味で、国が最近力を入れているのが「LLP」という有限責任組合の推薦です。

これは、出資者同士でLLPを作ってしまい、その中で利益配分を決めるという方式。

お金を出資していなくても作品に貢献すると思われるクリエーターにも権利を配分したり、有限責任なのでもしもの時に安心、という色々なメリットを前に押し出している記事をよく見かけます。

国がこれを勧める大きな理由の1つは、LLPは法人であるため「内部情報を公開する義務」があるということです。 要するに、外部の人間がLLP内部情報を簡単に知ることができるということですね。

『コルボッコロ』の制作を行う際にもボクの会社と出資をして下さった会社でLLPを組成したので、ボクも多少詳しくなりました。

上記の方法以外で、最近注目を集めているのは「ファンド方式」。 言葉の通り、株を発行し大勢の人からお金を集める方式で、現在もゲームや映画の制作の際に活用されているようです。

ボクは残念ながら、未だファンド方式のプロジェクトにメインで携わったことがないので詳しい仕組みは分からないのですが、注目されている方式の1つということもあるので、現在この方法で作品を1つ作りたいと考えております。 最近は『フラガール』の成功をもとにファンドについて綴った本など、色々な本が多く発売されているので、読んでみると現状の映画業界がわかって面白いかもしれません。

コルボッコロ

なんだか、ややこしいお話が続いてしまいましたが何となくでも理解して頂ければ嬉しく思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。

次回は、最近非常によく質問を受ける「会社を作るタイミング」についてお話させていただくつもりです。 ご興味をお持ちの方は是非ご覧になって下さい。

それでは皆様、またお会いしましょう。

いとそ けんじ

糸曽 賢志(いとそ けんじ)
糸曽 賢志
1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。 20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。 大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。 現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。 2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に 取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。 文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)
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