「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」

第二十九回「会社を作るタイミング?」

皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。

最近ボクは、今月締切りの『トランスフォーマー』の作業に追われて死にそうになっております。

さてさて、今回のコラムでは、最近よく受ける質問についてお話をしようと思います。 よく聞かれるということは、このコラムを読んでくださる方の中にも同じことを聞きたいと思っている方がいるかもしれない! と、勝手に思ったのです。

コルボッコロEDより

良く聞かれる質問というのは「会社はどういうときに作るのが良いか?」というもの。

フリーで活動されていたり、将来フリーでやっていきたいと思っている方々であれば知って損をする内容ではないと思うので、ボクなりに経験論に基づかせて書かせていただきます。 偉そうなこと言っているっぽいですが、全然ダメダメなボクが語ることなので話半分で聞いてくださいね。

1つの目安として一番よく聞くのは「自分の売上が1000万円を越えるようになってきたら会社を作ったほうが良い」というもの。

こちらは、どうやら税金上の理由みたいです。

また、ボクの場合は税法上の理由もありますが、それ以上に「作品を作っていく上で必要だったから」というのが大きな理由だったりします。

ボクは、第1回目のコラムから申している通り、昔から「オリジナル作品」にこだわっておりまして、自分の企画の売り込んで実際の契約に持っていく際に、個人より法人のほうが信用度の面も含めやりやすいのです。

また「アニメ」や「映画」を制作する際に、企画から完成まで丸ごと請け負うことが多いというのも大きな理由の一つ。

分かりやすく説明させていただくと、仮に1000万円で作品を作る契約を交わしたとします。

この場合、出資社が「会社」の口座に振込む場合1000万円を振込むことができますが、個人の口座に制作費を振込んだ場合、税金を引いて振込まなければならないので、税金20%を引いた800万円(本当はもっと細かい計算法があり比率は変わるのですが、ここでは分かりやすく20%にしておきます)しか振込まれないことになります。

税法上、会社の場合は使った必要経費を差し引いた後に残ったお金に税金がかかるのに対し、個人には振込む際に税金がかかるからです。

個人は国に申し出をしていない限り、事業としてお金を受け取ることができないためだそうですが、どっちにしても作品を作る前から200万円を取られたんじゃ困ります。

そういうわけで、大きなお金が動く場合になればなるほど「会社」で請け負ったほうが良いようです。

コルボッコロEDより

参考までにお話すると、ボクの周りの個人作家さんや漫画家さんなどで、大きな案件を抱えていたり、連載をもたれている方は密かに会社を持っている方が多いです。 ただ、会社名より作家自身の名前を前に出したいと考えている方は、特に会社を持っていることを大きく打ち出してない場合が多いだけですね。

逆に会社名を前に打ち出している方は、会社のブランド価値を上げたいと考えている方や、会社の規模を大きくしたいと考えている方が多いのではないかなって思います。

ただ、会社は作ったら作ったで、経費の処理や決算など面倒なことが多かったり、例え赤字でも支払わなければならない税金も10万円くらいあるので、くれぐれもお気を付けて。

今回書いた内容は、最初にも書きましたがボクの体験をもとに書いているので、ひょっとしたら細かいところで実際の法律と違う部分があるかもしれません。

でも、たぶん大きく間違っていることはないと思いますので、あくまで参考の1つにでもと考えていただければ嬉しく思います。

というところで、ひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。

それでは皆様、またお会いしましょう。

いとそ けんじ

糸曽 賢志(いとそ けんじ)
糸曽 賢志
1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。 20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。 大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。 現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。 2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に 取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。 文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)
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