ライトノベル&イラストレーション

■ライトノベルのパッケージ

出版社が商品として提供している以上「小説の内容が面白い」というのは当たり前のこと、と三坂さん。問題は、どうやって店頭に並ぶ無数の「面白い小説」の中から、自分たちが出版した一冊を読者に手にとってもらうか、だといいます。

三坂:そうなった時、とりわけ重要になってくるのが、イラストや装丁といった「パッケージ」なわけです。たとえば細かい例ですが、MF文庫Jの背表紙が緑で統一されているのも、そうした理由からですね。後発のレーベルでしたから、まずは「MF文庫J」という存在を際立たせなければならなかったからです。

神様家族(8)
(amazon)神様家族

(C)桑島由一/メディアファクトリー
イラスト:ヤスダスズヒト

MF文庫Jは、もともと私たちの会社が展開しているアニメ作品のノヴェライズを中心として始まりました。それが現在のようにオリジナル作品が中心を占めるようになっていったのは、清水マリコさん『嘘つきは妹にしておく』、桑島由一さん『神様家族』といったオリジナル作品が好評をいただいたからです。特に『神様家族』は、イラストレーターのヤスダスズヒトさんが、装丁まで含めて手掛けられ、ライトノベルではちょっとめずらしい、ポップでスタイリッシュな雰囲気で、女性読者も数多く獲得することができました。もし、別の方が装丁を手掛けていたら、また違った売れ方をしていたでしょう。

現在のライトノベルの特徴的な装丁は、カバーにキャラクターを大きく配置したもの。こうしたデザインがライトノベルで主流になったのは、引き算の方法論からだ、といいます。

三坂:昔の少年少女向けの本は足し算の発想でデザインされていたものが多かったと思うんです。たとえばSFなら、宇宙が舞台だよね、宇宙船も出てくるよね、ロボットも出てくるよね、主人公はこんな人だよね、という具合に、出てくる様々な要素を入れていく。

だけど、文庫ってすごくサイズが小さい本ですよね。色々な要素を詰め込むと、かえって見づらくなってしまう。そこでむしろ引き算になっていったんでしょう。読者が本当に注目するもの以外を除いていく。そうするとやはり最後に残るのがキャラクターなんですよ。一口にイラストといっても様々ですが、やはりライトノベルにおいて求められるのは、イメージを喚起できる魅力的なキャラクターですね。

カバーを作る際は、イラストレーターはもちろん、編集者や装丁者の裁量も大きくなります。最近では、デジタルで描かれたイラストが主流になり、修正も容易なため、デザインの段階で、あえて背景の部分(レイヤー)などを消してしまうこともあるといいます。

2/4
次ページへ




  最近の記事

ぷらちなトップページに戻る ぷらちなへお問い合わせ