ライトノベル&イラストレーション

■「日本一ライトノベルを売る男」の売り方

では、大塚さんが「日本一ライトノベルを売る男」となるために、どのような工夫をしていたのでしょうか?

大塚:カバーイラストが重要なライトノベルであればこそ、なるべく表紙が見えるように本を置いていきたいのですが、ライトノベルの刊行点数は、昔に比べてだいぶ増加しています。電撃文庫を例にとれば、初期にはひと月5~6冊程度だった刊行点数が、03年の時点では月10点程度、現在では15点ほどになっています。他にも新規参入レーベルの登場などで、月あたりの刊行点数はまだまだ増加傾向にあります。

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しかし、本の点数が増えても平台の面積には限りがあります。それでも、できるだけ表紙は見せたいので、平台に納まらない本は、面陳という陳列の仕方をします。平台ではなく棚の中に、表紙が見えるようにして置くという方法ですね。私が担当になってからは、棚に入れる本の数を減らしてでも、表紙のビジュアルの魅力を伝えたいと思いまして、面陳の数を増やすようにしました。

私が書泉を退職して富士見書房に転職する直前に、店内の改装がありまして、その際にも、今後の刊行点数の増加を見込んだ上でビジュアルを重視した陳列が出来るよう、余裕をもった配置にしました。

もう一つ、大塚さんが語ってくれたのが、ウェブとの連携です。そもそも、大塚さんの名が一躍有名になったのも、ウェブ上の有志イベントがきっかけでした。

大塚:ライトノベル読者の多くはシリーズで作品を買っています。そこで、あるシリーズの読者に別のシリーズを買ってもらう方法を考えていたんですね。最初は、書店の売り上げランキングを出してヒット作を紹介しようとしたんですが、人気シリーズを上から順に並べたような、あまりに面白みのないものになってしまった。これでは新規開拓はできないと思っていたところに、「このライトノベルがすごい!」(「ライトノベル・ファンパーティー」と名称を変更したのち、2005年に更新停止。)というウェブサイトの企画を知ったんです。宝島社の同名ガイドブックの刊行に先駆けて行われた、2004年のライトノベル・ベスト10を投票で決めようという企画でした。これは渡りに船だと考えまして、それを元にうちでフェアをやらせてもらったんです。そしたら、「ネットの企画で実際に書店がフェアをやるなんて」と一部で妙に評判になってしまいまして(笑)。

お蔭様で、けっこう実績も挙げることができました。「このラノ」の1位は秋山瑞人氏の『イリヤの空、UFOの夏』でした。いまとなっては大ヒット作ですが、当時はまだ知らない人も結構いらっしゃいました。そうした方にこの作品を紹介できたのは、とても喜ばしいことだと思います。

ウェブとの連携については、今後も考えていくべきと思いますが、その一例になったと思います。

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