小学館ガガガ文庫編集部 ―ライトノベル文庫誕生の瞬間に迫る―

ライトノベル&イラストレーション

■ガガガ文庫の創刊ラインアップ

ガガガ文庫の顔となる、小学館ライトノベル大賞受賞作2作品、大賞の『マージナル』、ガガガ賞の『学園カゲキ!』とは、それぞれどんな物語なのでしょうか。

マージナル(amazon)

神崎紫電「マージナル」

著:神崎紫電
イラスト:kyo

編集Y:『マージナル』は、殺人や拷問への強い衝動を抱えつつも、踏みとどまり続けている高校生の話です。そんな主人公が、自身が主宰するアンダーグラウンド・サイトの訪問者からクラスメイトの惨殺画像を受け取る、という導入から始まり、日常と非日常の境界で揺れ動くサイコサスペンスです。とはいえ、コミカルなやり取りもあり、バランス感覚にすぐれた作品です。

湯浅:選考の過程で、編集部が4人とも「面白い」と思った作品なんですが、ではどこが面白かったか、というと皆、別のことを言う(笑)。ですから、誰が読んでも楽しんでいただけると思います。

一方、もう1冊のガガガ賞を受賞した『学園カゲキ!』は、スターを養成する学園を舞台にした学園コメディで、安心して読めるスタンダードなライトノベル。その直球をてらいなく書ける才能に注目しました。言い訳なしの直球さで、今後、これまでのライトノベルをずばっと飛び越えてくれる作家になればいいな、と思っています。

ガガガ文庫 創刊ラインアップ
マージナル著:神崎紫電 イラスト:kyo
学園カゲキ!著:山川進 イラスト:よし☆ヲ
ハヤテのごとく!春休みの白皇学院に、
幻の三千院ナギを見た byハヤテ
著:築地俊彦 原作/イラスト:畑健二郎
ぼくらの~alternative~(1)著:大樹連司 原作/イラスト:鬼頭莫宏
月光のカルネヴァーレ
~白銀のカルアティード~I
原作:ニトロプラス 著:J・さいろー
イラスト:大崎シンヤ(UNKNOWN)
樹海人魚著:中村九郎 イラスト:羽戸らみ
新興宗教オモイデ教 外伝(1)監修:大槻ケンヂ 著:原田宇陀児
イラスト:津路参汰(ニトロプラス)
人類は衰退しました著:田中ロミオ イラスト:山﨑透
FREEDOM フットマークデイズ1企画/原案:高松聡 監修:佐藤大
著:古川耕 イラスト:桟敷大祐・曽根由大
武林クロスロード著:深見真 イラスト:Rebis

ライトノベルは、現在多くの出版社が参入する激戦区となっています。その中で、ガガガ文庫は試行錯誤を続けながら、色々な面白さの可能性を読者に提示していきたい、と編集部の皆さんは言います。

学園カゲキ!(amazon)

山川進『学園カゲキ!』

著:山川進
イラスト:よし☆ヲ

湯浅:ガガガ文庫にはオリジナル作品、自社マンガ作品との連動、他社さんの作品のノベライズという3つの柱があります。創刊ラインアップでは、「オリジナル」にあたるものが先にあげた新人の2作品と『武林クロスロード』『人類は衰退しました』『樹海人魚』。「自社マンガとの連動」作品が『ハヤテのごとく!』『ぼくらの』のノベライズ。「他社作品とのメディアミックス」展開をしたのが『FREEDOM フットマークデイズ1』『月光のカルネヴァーレ 白銀のカリアティードI』『新興宗教オモイデ教外伝1』になります。

編集G:創刊ラインアップには少々混沌とした感があるのは否めません。ただ、小学館のマンガ雑誌に「少年サンデー」もあれば「IKKI」もあるように、バラエティー豊かなものを包括できるのがライトノベルの面白さだと思うんです。

レーベルの方向性をあまり統一してしまうのもよくないと思うんですよ。読者の趣味・嗜好というのは時代とともに移り変わっていくものです。もし創刊ラインアップの中からヒット作が生まれたとしても、それと同じ様な作品ばかりになってしまうと、時代の変化とともに、一気に地盤沈下してしまう恐れがある。

今、業界が全体的にそういう風潮になっているという危機感がありまして、うちはちょっと変わったことを試していきたいな、と思っています。そうじゃないと新規参入する意味もありませんから。

湯浅:ありがたいのは、小学館には、いろんな物を出して、どれが伸びるかを見させてくれる懐の深さがあることです。1~2年様子を見てダメだったらすぐ撤退する、ということにはならないはずですので、どうぞよろしくお願いします。

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