【ぷらちな】アニメ新表現宣言!新房監督作品の奥にアニメ表現の最先端を見た!『さよなら絶望先生』シャフト《後編》

絶望した!なかなか掲載されないインタビューの続きに絶望した!!というわけで、お待たせしました。アニメ新表現宣言!新房監督作品の奥にアニメ表現の最先端を見た!《前編》からの続きです。いよいよ話題沸騰の『さよなら絶望先生』OP、そして“シャフト節”とよばれる映像演出の裏側に迫ります。マホ!
■人として軸がぶれている!
――久米田先生の絵柄のポップさ、というのは、扱うネタのインパクトが大きいこともあってか、あまり主題的に取り上げられたことがないですよね。

尾石 そうですね。そこはちゃんとアニメで再現したいと思ったところです。
大沼 時代に合わせてどんどん絵柄を変えているんですよね。しかも変化していく中にも自身の色をきちんと持たれていて、そこがすごい。だから、業界関係者にもファンが多いと思いますよ。
尾石 『絶望先生』のアニメではまずなによりも「久米田先生を喜ばせたい」というところでモチベーションがあがりますね。すごく楽しみにもしていただいているそうなので。
新房 4話からのOP映像は喜んでもらえたんじゃないかな?
――あの映像のアイデアとクオリティには、観たひとが度肝を抜かれたと思います。三話までの有名コピペを使ったOPも面白かったのですが。
尾石 3話までのOPも手は抜いていないんですよ。でも何話になっても「次はなんのコピペだ?」と視聴者の皆さんに言われ続けるのは嫌だったんです。変化すること自体が予定調和になってしまっているようで。やはり常に観ている人を驚かせたい、という気持ちがありますので。
――そうした姿勢から、シャフト作品の冒険的なOP映像が生まれてくるんですね。
尾石 でも毎回、アイデアの段階でプロデューサーからボツにされていたりするんですよ。『絶望先生』のOPも、最初に出していたネタを、放送倫理上ダメだといわれたので(笑)だいぶ控えめの表現にしました。

大沼 あんまり変わってないじゃないですか(笑)。
――十分やばいですよね(笑)。主題歌も『絶望先生』と大槻ケンヂさんの世界観が本当にマッチしていますよね。
尾石 本当にいつも曲に恵まれていると思います。「『絶望先生』には大槻ケンヂさんの曲が合うんじゃないのかな」と言っていたら、本当にそうなって驚きました。自分は筋肉少女帯がずっと好きだったんです。だから、大槻さんの歌に映像がつけられるのはすごくうれしかったですし、好きだからこそのプレッシャーがありましたね。

――『ぱにぽにだっしゅ!』でも、ご自分でPCが弄れなかったというのが信じられない程にデジタルな感触が濃厚な作品で驚かされました。そうした尾石さんの映像感覚のバックグラウンドはどこにあるのでしょう?
尾石 自分がすごく意識しているのはコマーシャルアート、つまりCMや広告なんですよね。あのセンスをアニメに持ち込めないかな、と常に考えています。誤解を恐れず言えば、あんまりアニメだと思って作ってないんですね。「映像を作ろうと思ったらたまたま素材が紙だった」くらいの気持ちで、「アニメーション作品」という意識の枠を取り払っています。グラフィックデザインを突き詰めたアニメはあまりないように思うので、隙間産業的に狙ってみたい、と。
――『絶望先生』のOP映像ではどんな点を意識されたのでしょう?
尾石 今回の『さよなら絶望先生』では、「字」が印象的になるようにしたいなというのがありました。新房監督もそうなんですけれども、すごくカチッとした映像が好きなので、そこを突き詰めていくと色使いもすごくシンプルになっていく。少ない色構成でも、カットを積み重ねていけば鮮やかなものになっていくんですよね。だから、作業中はとにかく一枚一枚の画の完成度を上げていくことだけを考えてやっていますね。
大沼 3Dアニメーションが2Dアニメーションにとって変わる、と言われていたときがあったんですけれども、2Dアニメーションだからこそできる「平面的なセンス」の良さというのがあるんですよね。これは新房監督に言われて気がついたんですが。

新房 CGが進化して、実写で何でもできるようになってしまったからね。平面の良さを見せたいんだよ。その「良さ」ってのは何でもよくてさ、例えば「萌え」だったら「あれはアニメの女の子だから良いんだよね」っていうのを出したいんだよね。
大沼 80年代のアニメを3Dで作り直したら面白いか? と考えてみたら、そんなことはないですよね。3Dだから、2Dだから、という区別ではなくて、今だからこそ出せるものをやることが大切なんですよね。例えば、新房監督は版画刷りの花札が持っていた味を今の作業環境に活かしたいという。
新房 僕は葛飾北斎が大好きだから。北斎は本当にカッコいい。
尾石 他のアニメが西洋絵画であるのならば日本画で平面というのもありではないかと思いますね。
――音楽PVでもアニメを使ったりすることがありますが、尾石さんにミュージッククリップ制作の依頼があったりはしないのですか?
尾石 ないです。自分としてはアーティストのPVはむちゃくちゃやりたいんですけど。『絶望先生』のOPが縁になって、再結成された筋少のPVをやれないかなーなんてことをちょっとだけ思ってるんですが……(笑)。とにかく、曲に合わせて映像を創るのは楽しいんですよ。お話があれば是非やってみたい。
©久米田康治・講談社/さよなら絶望先生製作委員会 ©氷川へきる/スクウェアエニックス・ぱにぽに製作委員会.