コンベンションのススメ ―MYSCON9レポート
続けて、話題は、その次のシリーズである『セカイのスキマ』へと移ります。
田代 これまでのシリーズがミステリよりだったんで、もう少しライトノベルよりの作品を書いてみようと思って書いたシリーズです。 ひとつ妖怪バトルでもさせるかと考えたんですが、ただ、さすがに、ミステリー文庫から出る作品ですので、何かひとつ変わったところがほしい。そこで、殴る蹴るではなく、ロジックで妖怪と戦ってみよう、という発想が出てきました。
宇佐見 妖怪、お好きなんですか?
田代 嫌いではないですよ?
宇佐見 1人あげるなら?
田代 1人というか、1匹ですが、土蜘蛛、とか……。
宇佐見 土蜘蛛……ですか……。蜘蛛、ですよねぇ?
インタビュアー、自分には理解できない世界の片鱗を感じたか、サクっと話をかえます。
宇佐見 しかに学園が舞台で、主人公がヘンな部活に入ってヘンな女の子と出会い、という展開は、たしかにおっしゃるとおりライトノベル的ですよね。 こっちで好きなキャラクターは?
田代 顧問の先生が、わりと。
宇佐見 じゃあ二度目の握手を。
年上好きで意気投合したか、二人が壇上で熱い握手を(ry
宇佐見 年上が好きなんですか?
田代 たぶん、強い人間より強いキャラが好きなんですよね。 平井骸惚の奥さんなんか典型的ですけど、探偵役というのは、作中世界における神なわけですよね。探偵の言うことは絶対に正しい。その平井骸惚が唯一頭の上がらない人間が、奥さんなわけですよ。
宇佐見 そのへんがやはり田代先生の好みなんでしょうか?
田代 その質問に、好みですと返してしまうと、僕がドMということになってしまいそうで率直には答えられないんですが(笑)。
そんなこんなで年上トークがひとしきり繰り広げられたあと、インタビューは、ライトノベルとミステリの関係をめぐる話題へと移ります。
宇佐見 田代さんは、ずっとライトノベルという場でミステリを書いてこられました。しかし、ミステリとしての骨格を作ったうえで、キャラクターも描くとなるとバランスが難しいのでは? そのあたりのバランスというのはどうやってとっているのでしょう?
田代 それが特にはないんですよ。どうしても両立させなければならないという意識をそれほどもっていないので、天然でやってます。ミステリの面白さと、キャラクターの面白さ、どちらかが及第点を超えることができれば、まあ、偏ってもいいんじゃないか、と。 だから、キャラクターに比重を置くときもあれば、逆に、ストーリーやトリックに比重が行ってキャラクターがわりとお飾りになってしまってしまうことがありますし。
宇佐見 キャラクターをたてるタイプとストーリーやトリックをたてるタイプという区別でいえば、最新作の『赤石沢教室の実験』は、やはりストーリー/トリック重視の作品ということになりますか?
田代 そうですね。『赤石沢』のあとがきでも、少し書かせていただいてますが、もともとの着想には二人称の小説を書いてみたかったというものがあります。 そこで、『キリサキ』と『シナオシ』には、ナヴィという主人公意外には、声も聞こえないし、姿も見えない、というキャラクターがいまして、そのキャラクターの一人称みたいな語り口でやれば、二人称の小説が書けるんじゃないかな、と思いついたのが最初でした。
宇佐見 なるほど。ところで、この質問をずっとつづけてきたので、この際、聞かないわけにはいかないんですが、『赤石沢』で一番好きなキャラは?
田代 赤石沢宗隆になるでしょうね、やはり。個人的に書いたことのなかったキャラですので。今回、彼の病んだ一人称だけで、100ページあるんですよね。それだけ書き続けたせいで、何かが芽生えた感じがしますね。 ただ、編集の方に「この狂気がすごい」という言葉をいただいたり、ネット書評で「こいつの狂いっぷりがすごい」みたいなことを書いていただいて、それはすごく光栄なことなんですが、個人的に言うと、それほど狂った人間だとおもって書いたつもりはないので、狂ってる狂ってるいわれるとなんかちょっと悲しくなるんですよね(笑)。
宇佐見 本書は、ライトノベルではなく〈Style-F〉という単行本で出版されましたが、意識の違いは?
田代 それが、あまり意識していなかったんですよ。もともとは『キリサキ』『シナオシ』に続き、富士見ミステリー文庫から刊行する予定の作品として考えていて、そこで〈Style-F〉の話を頂いたんですけど、作風を変えようとはあまり思いませんでした。 というのも、富士見ミステリー文庫の主要読者層は中高生という話なんですが、僕の読者の平均年齢は、なぜか25才なんですよ(笑)。平均が25なら、いままでどおり書いていいじゃないか、と。
宇佐見 もはやわざわざ名前をあげるまでもないと思いますが、現在、桜庭一樹さんや米澤穂信さんといったライトノベル出身の作家の方々が、一般文芸の世界に進出していく「越境」が増えています。田代さんはどうでしょう?
田代 一般の方にいこう、ライトノベルに居続けよう、といった考えはないですね。両方でかけるのが一番の理想です。一般のミステリを読んでいる方々も、ライトノベルなんて萌えばっかだろうと思わないで読んでほしい。桜庭さんや米澤さんの例をだすまでもなく、全体の水準があがってきていると思うんですよ。ライトノベルだから読まないということではなく、いろいろ読んでほしいと思います。できれば一番に僕の作品を(笑)
そう締めくくった田代先生。最後は、一般参加者に寄せられた「古今東西の探偵の助手になるなら誰がいい?」「気分転換の方法は?」「ネットは見るほう?」といった質問にも答えられていました。なんでも、デビュー直後は「自分の作品についての書評を検索するときには手が震えた」とか。
現在は、次回作へむけて充電中、という田代先生。
田代 周りから求められるものも徐々に大きくなってきていて、前作、前々作を越えなければ、というプレッシャーを毎日感じています。 ただ、どの作品もそうなんですが、書いている途中は、これじゃ前の作品よりダメだと思いつつ、完成させてみると「意外にいけるんじゃねぇ?」と思ったりもするんですね。まあ、これからもずっとそんな感じで続いていくんじゃないかな、と思います。
宇佐見 これまでの作品を超えた作品を読めることを楽しみにしております。
大きな拍手が2人に送られ、第2部も無事終了しました。
なお、田代先生は、5月25日に、出身校であるアミューズメントメディア総合学院東京校で行われるイベント「富士見書房からデビューするために! 連続イベント第1弾」にも、出演されるとのこと。詳しくはこちらをご覧ください。






