『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』荒牧伸志監督インタビュー

『ロバート・A・ハインライン『宇宙の戦士』の実写化作品として1997年に公開され人気を博した映画『スターシップ・トゥルーパーズ』。シリーズ最新作となる『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』は、主要スタッフを日本人が務めたことでも話題となりました。シリーズの特徴とも言えるド派手で骨太なアクションはもちろん、宇宙船という閉鎖空間で繰り広げられる人間ドラマもすべてCGで描ききった意欲作となっています。

監督は『APPLESEED』『EXMACHINA -エクスマキナ』などのフルCG作品を数多く手がけられてきた荒牧伸志さん。日本のCG文化に並々ならぬ貢献をされてきた荒牧さんならではの視点は、人気シリーズにどのような影響を与えたのか? Blu-ray&DVDが11月21日に発売されるこの機会に、監督ご本人にお話をお聞きしました!



――『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』を拝見して、まず何よりおっぱいの表現に驚きました。「CGもここまできたか!」と(笑)。

ありがとうございます(笑)。

――荒牧さんといえば、『メガゾーン23』シリーズを始めとした、様々な作品でのメカデザインの印象が強いですが、近年では3Dライブメーション『APPLESEED』『EXMACHINA -エクスマキナ』等のフルCG作品での監督としてお名前を目にすることが多くなりました。今作に至るまで、フルCG作品を作る上で意識の変化みたいなものはありますか?

スターシップ・トゥルーパーズより

僕は元々メカの表現から入っていますので、複雑なデザインでもカチッと表現できることがCGのメリットのひとつだと思っていたんです。でも、映像でドラマを作っていく中で、感情表現を含めたキャラクターの造形は本当に大事だなと気づいたんですね。

いわゆる手描きのアニメーションはアニメーターさんの力で表現するので、そういった職人の力によるところが非常に大きいですが、CGだとモーションキャプチャーを使って、役者さんの演技をトレースして動きをつけていくわけです。こちらが「こう動いて下さい」と指定するだけでなく、そこには当然、役者さん自身の演技もあるんですね。それをうまく引き出して、彼らのアイデアもどんどん盛り込んでいくと、キャラクターも膨らんでいくんだと実感したんです。

――CG技術を使うことでキャラクターに深みを出そうと意識されるようになったんですね。

今回はそういった役者さんのスキルを利用しない手はないということで、最初からそれを狙ってやろうと。ちゃんとアメリカ人の役者さんのオーディションをやって、このキャラクターにはこの人が合うね、というところから始めました。僕も役作りを学んで、役者さんと一緒になって、表情の作り方や全身の動きから、どういったボディーラインになるのかといったところまで、アメリカ人らしさ、引いては『スターシップ』らしさを醸し出せないかと試行錯誤しました。コンテを切って芝居を決めるのではなく、役者さんがセットに入ってから動きを決めるといったライブ感を重視して。結果的にうまくいったんじゃないかなと思っています。

――クリエイティブディレクターとして参加されていた『Halo Legends』のケレン味のあるアクションとは違って、今作は動きからドラマを感じさせる演技だと感じました。

『Halo』は短編映画だったので、基本的にはガチガチのアクションストーリーにしようということで作ってましたからね。あの作品には、実はほとんどキャラクター同士がしゃべるシーンってないんですよ。でも今作は、ちゃんとひとりひとり個性のあるキャラクターを見せたかったので、同じようなアクションでもキャラクターによって演技が違う、というところまでこだわって作り込みました。高校で『スターシップ』の原作である『宇宙の戦士』を読んだときから、パワードスーツばかり気にしてメカの演出やデザインをやってきましたが、今ようやくスーツの中身である人間そのものにたどり着いて、興味が湧いてきた感じですね。もう50歳になったので「おせーよ!」って話ですが(笑)。新鮮な気持ちで人間の芝居をやれたので、楽しかったですね。

――バグの動きも実写版『スターシップ・トゥルーパーズ』のガシガシガシっと向かってくる怖さがそのまま踏襲されていましたね。

バグの動きはそもそも、天下のフィル・ティペットですからね。完成度が非常に高かったので、スタジオのみんなでシリーズを何度も観返しました。15年前のCGなんですけど、今観てもカッコいいですし存在感がありますよね。見劣りしないように、なんとかあのレベルにしなければというのは最初からの目標でしたが、なかなか大変で。

スターシップ・トゥルーパーズより

――バグの大群が重なり合って向かってくるシーンは、いい意味ですごく気持ち悪かったです(笑)。

今までと同じような表現で勝負しても新しさはないですし、また同じことをやっていると思われたくはなかったので、バグの持つ「嫌な感じ」を違う演出でやってみたかったんですね。そこで、密室の中であちこちから迫ってくるというのはどうだろうと。

――『エイリアン2』を思わせるようなシーンも。

もちろん、いろいろなところから、あらん限りのネタを集めてやりました(笑)。

――今作では「パワードスーツ」も大活躍していますが、メカデザイナーとして、やはりパワードスーツには並々ならぬ思いがあったのでは。

そうですね。この作品をやらせて頂くにあたって、パワードスーツは一番やりたかったことです。『スターシップ』シリーズが、パワードスーツを僕に残しておいてくれたということは、非常にありがたいですね。おかげでモチベーションも高く保てましたし、ストレートに気持ちよく表現できたかなと思います。降下カプセルとか、原作にもあったワクワクするシーンをひと通りやれたので、やり切った気持ちはありますね。

――パワードスーツに関しては宮武一貴さんのデザインや、加藤直之さんの挿絵のイメージが強いと思うんですが、本作はどういったコンセプトだったんでしょうか?

当然、僕も『宇宙の戦士』の挿絵に衝撃を受けて以来、それがずっと残ったままなので、ある種、不可侵のものなんですね。超えるとか超えないとかいうことではなく、本当に僕にとってのスタート地点なんです。でも『スターシップ・トゥルーパーズ』という作品と原作のイメージは重ならなかった。じゃあこのシリーズに一番沿ったパワードスーツはどんなものだろうと考えたときに、機械の塊のようなものではなく、やはりあくまでも人間が中心にあってスーツとして身に着けるものじゃないかと。今の観客に見てもらうという意味でも、もうちょっとライトな、現代の戦闘服みたいなものの延長にある方が受け入れられるんじゃないかなと思ったんです。実際に米軍が実験的にパワードスーツのようなものを作ったりしていますから、もうちょっと現代とのつながりが見出せる、身近なデザインにした方がいいだろうと。

スターシップ・トゥルーパーズより

――デザインされる上で、参考にされたものはありますか?

FPS(一人称視点シューティングゲーム)ですね。僕もスタジオの仲間とよく遊んでいて好きなんですが、そういったゲームのテイストをそのまま取り入れようと思ったんです。物語や、戦闘シーンの雰囲気にゲームからのイメージを取り入れて「今風」にした方が、興味を引かれる人は多いんじゃないかと。

――確かに、FPSにはパワードスーツ的なものが登場する機会は多いですね。

そうなんですよ。なので、そこからのパワードスーツ・ファンもやはりいるはずだと。ゲームを起点とした興味からでも観てもらえればすごく嬉しいなと思います。

――最近は、トゥーンレンダリングによるアニメ的な質感のCGを使った表現もかなり多様化していますが、『APPLESEED』からアニメーションとCGについて試行錯誤されてきた監督としては、この流れをどのように見られていますか?

面白い試みだなと思いますね。そういったところに興味を持ってやってらっしゃるのは、以前一緒にやっていたスタッフだったり知り合いだったりするんですが、本当に日本ならではの表現だなという感じがします。CGを使った表現についてはまだまだ追及できると思いますし、関心を持ってくれる層が増えることは非常にありがたいことですよね。チャンスも広がりますから、みんなで成功したいね、という思いはすごくあります。ただ、イメージを膨らませて何か面白い作品を作りたいという意味では、アニメーションという表現の中で手描きだCGだと線引きをしているつもりはないですね。

――アニメファンにとっては、「不気味の谷」問題も含めて、CGを使ったアニメの質感の付け方に関しては価値観が揺らいでいるところだと思います。荒牧監督としては、そこには明確な線引きはないと?

スターシップ・トゥルーパーズより

そうですね。ただ、今回の作品で言うと、元々は実写作品ですよね。それが好きだったファンにはこだわりがあって、期待している映像というものも確かにある。『スターシップ』だと恐らくはフォトリアルな質感がそうだと思うんですが、例えばもっとアニメっぽい原作で、それがファンに馴染んでいるのであれば、アニメっぽくする必要が出てきますよね。そういった、元々のイメージに近い形の映像を提供するための振れ幅がCGにはあると思っています。

手間の掛かり方はそれぞれ違いますが、作品を見てくれるファンが一番喜ぶ見た目や質感を探るというのが、ひとつの大きなポイントなのかなと思うので、今回そこにはすごく意識をして作ったつもりです。とかくCGアニメ、CG映画というのは未だに表現としてCGの部分が話題になりがちですが、苦労して手間をかけて作っているとはいえ、それだけを押し付けるのも変な話だと思っていて。逆に言うと、そういったことを気にせずに楽しんで観てもらえるのが僕らにとっては良いことなんですよね。今回はその手ごたえを感じているところです。

――『スターシップ』の1作目が15年前ということなんですが、意識はされましたか?

とにかく、何はともあれ1作目からのファンの方に喜んでもらわなきゃと思っていました。皆さんからたくさん反応を頂いているので、ほっと胸を撫で下ろしているところですね。本当に嬉しいです。

――「実は『スターシップ』好きなんだ」という隠れファンは多いと思います(笑)。

確かに、意外と多いんですよね。日本にこんなにいたのかと思うくらいです。映画のファンと原作のファンのどちらも楽しめるようなエッセンスに、自分の思い入れもしっかり入れて作ったつもりですので、ぜひ楽しんでもらえればと思います。

インタビュー/構成: 草見沢繁(@shigeru_suso

荒牧伸志
荒牧伸志
1960年10月2日、福岡生まれ。OVA『メガゾーン23』シリーズなど、アニメを中心に多くの作品でメカニックデザインを担当。日米合作の『Halo Legends』など、CG映像の企画・演出も手がける。劇場作品『APPLESEED』『EXMACHINA -エクスマキナ』では監督を務め、トゥーンシェーダーを使用した3DCGで注目を集めた。

2012年11月21日『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』Blu-ray&DVDリリース!

『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』BDパッケージ

人気 SF 洋画シリーズ誕生 15 周年記念、ファン待望の劇場最新作がBlu-ray&DVDで登場!「パワード・スーツ」が全員標準装備となったトゥルーパーズが、群れで襲い来るウォリアー・バグや新種の強敵バグを前に死闘を繰り広げる。 監督に『APPLESEED』の荒牧伸志、テーマ曲に人気テクノロックユニット「BOOM BOOM SATELLITES」と、ハリウッド×日本のトップクリエイター集結したSF超大作。BD&DVDには、黒田崇矢、小林沙苗、平野綾など実力派声優を起用した劇場未公開の日本語吹替版を収録。1,500 セットの完全限定生産となるスペシャルパッケージには、荒牧監督自ら監修にあたったパワード・スーツフィギュアも同梱!

⇒『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』オフィシャルサイト(http://www.ssti.jp/ )

Blu-ray(BRS-80240)価格 4,980 円(税込)本編約 89 分/カラー/2 層ディスク/5.1ch サラウンド/日本語吹替 ≪映像特典≫ (約 84 分 ※音声解説は除く) /コンセプト・アート集 ※ブルーレイのみ特典 /荒牧伸志監督と製作者による音声解説/未公開シーン(2 種) /NG シーン集/メイキング・ドキュメンタリー集(11 種) ⇒amazon『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン[Blu-ray]』で見る

DVD(TSDD-80240)価格 3,990 円(税込)本編: 約 88 分/カラー/2 層ディスク/5.1ch サラウンド/日本語吹替 ≪映像特典≫ (約 84 分 ※音声解説は除く) 荒牧伸志監督と製作者による音声解説/未公開シーン(2 種) /NG シーン集/メイキング・ドキュメンタリー集(11 種) ⇒『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン[DVD]』をamazonで見る
発売&販売元:㈱ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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