アニメのゆくえ2011→

2011年10月27日に発表された「ウルトラスーパーピクチャーズ」の設立はアニメ界に大きな衝撃をもたらしました。新会社は、セルアニメ調の3DCGで新しい映像表現を切り開くサンジゲン、山本寛監督率いるOrdet(オース)、そしてガイナックスから独立した今石洋之監督らが結成したトリガーという3つのアニメスタジオを擁するホールディングカンパニーで、出資者にはグッドスマイルカンパニー、ブシロード、マックスファクトリー、ニトロプラス、ピクシブといった、近年、業界に話題を提供しつづけている若い企業が名を連ねています。

「アニメのゆくえ2011→」第4回は、アニメ制作の未来を変えるかもしれないこの新スタジオを率いることとなった、サンジゲンの松浦裕暁代表に、ウルトラスーパーピクチャーズ設立の背景と、新体制によってどのような変化があるのか、そして期待のUSP初作品となるノイタミナ『ブラック★ロックシューター』の見所と、サンジゲンが取り組む劇場作品『009 RE:CYBORG』の現状について伺いました。

⇒特集第1回 アニメ評論家藤津亮太氏インタビュー
⇒特集第2回 サンジゲン松浦裕暁代表インタビュー
⇒特集第3回 ニトロプラスでじたろう氏インタビュー

ウルトラスーパーピクチャーズ設立まで

――ウルトラスーパーピクチャーズ設立の発表には驚きました。いつ頃から動き始めていたんですか?

2011年の春ごろからです。その頃、Ordetは『ブラック★ロックシューター(B★RS)』の制作を手がけようとしていたのですが、大阪を基盤とするスタジオなので、東京で仕事をすることに若干の不安があったみたいなんですね。一方で、グッドスマイルカンパニーの安藝(貴範)社長も、色々なアニメに出資して、製作委員会に参加する中で色々な思惑があったし、サンジゲンにもこれからの仕事について考えるところがあった。そういった、アニメを作る側の色々なアイデアが、タイミング的に合致したんですよね。

アニメのゆくえ2011→

――設立のアイデアはどなたから提案されたんですか?

最初は安藝社長から、あくまで冗談っぽく「いっそOrdet と合併してみない?」みたいな感じで話をされました。ただ、そのアイデア自体は僕の中ではそんなにハズレてはいないんじゃないかと思ったんですよ。サンジゲンが、これからどうやっていくかを考えたときに、前のインタビュー(「アニメのゆくえ」第2回)でも話した通り、僕達はアニメのCGを作っていくので手描きの作画と上手く付き合っていく必要があるし、将来的には作画部隊が必要だろうと。

じゃあ、サンジゲンが作画部隊を作るのか、となると東京を拠点にしている作画マンと組むのは難しいんじゃないかと思ったんですね。フリーランスで仕事をしているアニメーターが、CG会社の所属スタッフになるのは難しいじゃないですか。では外の会社と組むのか、というと、自立した会社にはそれぞれの思想がありますから、CGを使うことのニュアンスが違ってしまうかもしれない。

でも、Ordetならそれはアリなんじゃないかと思ったんです。彼らは関西のスタジオで東京とは違うスタイルで仕事をしていて、実際にはどんなスタッフなのかまでは知りませんでしたが、直感的に、そっちの方が合っているんじゃないかなと。『B★RS』のために東京に来るというタイミングや、安藝社長とヤマカン(山本寛監督)、Ordetとの関係もあって、上手く繋がるんじゃないかって。ヤマカンとも、一緒にやってみたいと思っていたので、それで『B★RS』の座組を作り始めていく中でアイデアが膨らんでウルトラスーパーピクチャーズの構想ができたので、『B★RS』を作るために会社を設立したという訳ではないですけれど、そういう流れの上ではあったんですね。

――『B★RS』をOrdetの作画パートと、サンジゲンのCGパートで作品を作るというのも当初からのアイデアだったのですか?

プロデューサーからは、普通の作画アニメとして背景や車まわりをCGでというオファーだったんですが、やるなら「裏の世界」を全部CGにしたら面白いんじゃないの? と思って。『B★RS』なら表世界と裏世界を別々に作っても成立するし、サンジゲンは作画ライクな絵が作れるから、映像としても面白くなるはずだと。CGと作画の比率は1:3とかいうことになるかもしれないけれど、今までにない形だから面白いと思うし、全8話ならできるんじゃないかという話をしたら、安藝さんもフジテレビの山本プロデューサー(ノイタミナ編集長)も本当にできるなら面白いといってくれて。

アニメのゆくえ2011→

そこで、僕はそのために『天元突破グレンラガン』『Panty&Stocking with Garterbelt』の今石洋之監督を連れてくると言ったんです。ちょうどガイナックスから独立される頃で、今石さんなら絶対に興味を持ってくれるし、たぶんやってくれると思うと。『ブラック★ロックシューター』というタイトルを、Ordetとサンジゲンの共同制作で、現実パートが吉岡(忍)監督、裏世界パートが今石監督。これは二度と組めない座組だと思って。サンジゲンとしても次のステップに行かなければならない時期だったので、ここでやるのがベストだと考えました。

――作品制作をきっかけに、色々なもののタイミングが合致したわけですね。新社屋への移転も同じ流れで決められたのですか。

どうせならOrdetとは同じ場所でやった方が効率がいいし、将来的にも一緒にやるならその方がいいと考えている時に、この新社屋のビルが空くと聞いて構想が動きだしたんです。トリガーが合流するのはもう少し後になるんですけれど、やり方として「経営統合してOrdetがサンジゲンの子会社になる」とか「みんなサンジゲンになる」というのはナンセンスだと思ったんですよ。サンジゲンにはサンジゲンの色があるし、Ordetはヤマカンの会社でもあるので、合併ではなく違う形の方がいい。将来的にトリガーが合流する可能性もあったので、ホールディングスという形をとったほうがいいんじゃないかということになりました。

前へ
1/4
次へ



  最近の記事

ぷらちなトップページに戻る ぷらちなへお問い合わせ