アニメのゆくえ2011→

2011年、『魔法少女まどか☆マギカ』『STEINS;GATE』『Fate/Zero』といった数々の話題作とともにその名を広く知らしめることとなったゲームブランド「ニトロプラス」。無名の状態で初めて世に送り出したPCゲーム『Phantom PHANTOM OF INFERNO』がユーザーの口コミを経て大ヒット作となり、そこから10年の間、絶えず新しい想像力を美少女ゲームの世界にもたらし続け、名実ともにPCゲームのトップブランドとして知られるようになった彼らが、いまアニメの世界で大きな存在感をみせています。「アニメのゆくえ2011→」第3回は、激動の2011年を切り開いた精鋭集団を率いる、社長のでじたろう(小坂崇氣)氏に、これまでの歩みを振り返りつつ、なぜニトロプラスのクリエイターがアニメを舞台に活躍することになったのか、その背景を伺いました。

⇒特集第1回 アニメ評論家藤津亮太氏インタビュー
⇒特集第2回 サンジゲン松浦裕暁代表インタビュー
⇒特集第4回 ウルトラスーパーピクチャーズ

アニメのゆくえ2011→

「ガイナックスのような集団」を作りたかった

――数年前まで、「ニトロプラスといえばゲームの会社」という印象でしたが、今年は特にアニメの企画の周辺で名前を見る機会が多く、だいぶ印象が変わってきたように思います。

 たしかに、アニメに関わる比率が大きくなってきてはいますね。ただ、そもそもニトロプラスを立ち上げたときから、作品のメディア形態は必ずしもPCゲームでなければダメ、ということではなかったんですよ。作りたいコンテンツ次第で媒体を変えてアウトプットするというイメージで、今はたまたまアニメを作る機会に恵まれているので、それに乗ることが増えている……という状況だと思っています。

――でじたろうさんご自身は、アニメに対して特別な思いはあったのでしょうか?

 もともと僕自身は、ゲーム世代ではなくアニメ世代ですからね。マンガやSF小説も好きでしたけど、いちばん影響をうけたコンテンツは『機動戦士ガンダム』や『伝説巨神イデオン』、『超時空要塞マクロス』といったアニメでしたし。

 それから、「月刊Newtype」で編集者をしていたときに、ガイナックスの『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の広報・宣伝のお手伝いをする機会があったんですね。ガイナックスのみなさんは、まだゼネラルプロダクツと名乗っていたアマチュアのころから、プロ顔負けの作品を創ることで有名で、僕も名前は存じてました。そんな才能あふれるひとたち――それも、偶然集まった方々――がコラボレーションして作品を創っている姿に、とても共感して、同時にうらやましく感じていました。

 ニトロプラスを立ち上げたのは、「自分もガイナックスさんのような集団を作りたい!」という思いもあったんですよ。

――実際、ニトロプラスもガイナックスと似た道筋を歩んでいますよね。

 まずは仲間にめぐり合いたいと漠然と思っていました。虚淵玄や矢野口君、なまにくATKは、学習用ゲームソフトの開発をしていたころに、たまたま求人応募で入ってきたスタッフですからね(笑)。彼らなら何か面白いものが作れるのではないか? と思って、制作したのが美少女ゲーム『Phantom PHANTOM OF INFERNO』(2000年)で、何も美少女ゲーム業界のことがわかっていない状態で送り出したこの作品がヒットしたのは、運が良かったと思います。

――そして美少女ゲームで着実に実績を重ねられて、アニメの世界へ乗り出していかれた。初めてニトロプラスとしてアニメの制作に関わられたのは『熱風海陸ブシロード』のメカニックデザインとしてですが、どのような経緯だったのでしょう?

 当時、玩具開発を請け負っていたTAKARA(現タカラトミー)さんからお話をいただいたんです。ちょうど『斬魔大聖デモンベイン』を作った直後で、新しい造形のメカデザインをできる会社としてオファーをいただいたんですよね。アニメーション制作はガイナックスさんが手がけるということもあり、これはニトロプラスを立ち上げた経緯から考えても素敵な巡り合わせだと思ったのですが、残念ながら企画は頓挫してしまいました。

――脚本を担当されていた吉田直さんの急逝は、本当に惜しまれる出来事でした。その後、『斬魔大聖デモンベイン』(2004年)のアニメ化にあたり、大々的なメディア展開をされることになりますが、初のアニメ化作品であったOVA版『Phantom-PHANTOM THE ANIMATION-』とは、関わり方が異なりますよね。

 実は『デモンベイン』のメディア展開は、ゲームが発売するかなり前から仕込んでいたんですよ。『Phantom ?PHANTOM THE ANIMATION-』の時にはまだノウハウやエネルギーが足りなくて、コミカライズやノベライズなどの複合的な展開は実現できませんでした。だから、次にアニメ向きの企画ができたときにはメディアミックスをきちんとやろうという強い思いがありまして。『斬魔大聖デモンベイン』は、企画が出来上がった段階で、「これならアニメやコンシューマ展開を連動させられるし、作品に関わった人みんなでハッピーになれる!」と思ったんです。

――テレビアニメ化にまで至るメディアミックスの足がかりを作るのにはご苦労されたのでは?

 「Newtype」編集者時代からお世話になっていた、角川書店の井上(伸一郎)社長に直談判させていただいて、角川書店の各誌の編集長が集まる前でプレゼンをしたところ、クトゥルー神話がベースで美少女が登場するロボットものであるのと、ヒロインが魔導書というところが新しいと気に入っていただけました。「クトゥルーでロボットは『戦え!イクサー1』以来だね」なんて話もしましたね(笑)。それで、いきなりアニメ化というわけにはいかないけれど、コンシューマ展開を仕込みましょう、と。結果的に、コンシューマ版『斬魔大聖デモンベイン』限定版には、30分のOVAをつけることになり、その流れでテレビシリーズも決まっていきました。

――そんな背景があったんですね。順調な展開ですが、結果のほどはいかがでしたか?

 DVDセールスは良かったですし、角川さんからも「続編を作るのであれば是非一緒にやりましょう」と言っていただけました。ただ、自分としてはもう少し頑張れたような思いもあって、次があるならもっと上を目指そうと。ユーザーさんからも色々とご意見をいただけたので、自分達もお客さんも、両方がもっと納得できるようなものを届けられるアニメができればいいな、と思いました。

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