■『アタゴオルは猫の森』野口周三×山国秀幸対談

山国氏と野口氏

およそ三十年前から展開されている、ロングセラーコミック「アタゴオル」シリーズ。極めて独特な世界観から、本格的な映像化は困難、と言われ続けてきたその作品が、3DCGという表現方法を手に入れ、この秋、ついに映画化される運びになりました。制作を手掛けたのは、業界内外でも高い評価を得ているCGクリエイター集団・デジタル・フロンティア。この期待の新作『アタゴオルは猫の森』の、企画誕生の経緯や作品の魅力を、ミコット・エンド・バサラのプロデューサー・山国秀幸氏と、出資元のひとつであるAMGのプロデューサー・野口周三氏の対談でご紹介したいと思います。あなたも、「猫」の世界をのぞいてみませんか――?

■『APPLESEED』から『アタゴオルは猫の森』へ

野口:ミコット・エンド・バサラのCGアニメーションの前作というと『APPLESEED』で、今回の『アタゴオルは猫の森』とは作品の毛色も、狙って行く客層も大分違いましたよね。そこでまず、御社が『APPLESEED』の次に『アタゴオル~』という企画をたてられた経緯を伺いたいのですが。

APPLESEED
「攻殻機動隊」の士郎正宗のコミック「アップルシード」が原作のフルCG劇場アニメーション。2004年公開。モーションキャプチャーでリアルな動きを再現した3DCGをセルアニメのように見せる最新の3Dライブアニメ技術で、これまでにない映像表現を実現した。
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山国:『APPLESEED』ではコアなターゲットを狙ったディープな作品でしたので、次はターゲットをもっと広くした作品を、という話だったんです。しかし、「ターゲットを広く」といっても、ピクサーやドリームワークスみたいなことを追求しても、資金と時間の問題でかなうわけがないし、日本の制作スタジオが作るのだから、やはり日本のアニメならではの良さはやっぱり抑えている必要がある。だから、こちらとしては全く違った作品とも思っていないんです。あくまで『アタゴオル』も『APPLESEED』の延長線上にある新しいチャレンジだ、と。

野口:三年程前から短いパイロット版を作って回られていて、その過程で僕もこの企画を知ったわけなんですが、その段階で観たひとたちの反響はどうだったんでしょう?

山国:『アタゴオル』のパイロット版映像は、今回の映画でプロデューサーとしてご一緒した松村傑さん(デジタル・フロンティア)が企画、制作されたのですが、これが素晴らしかった。「日本でもこういうファミリー層にとどきそうな3DCGアニメーションができはじめるんだな」という反応がひとつ。あとは、完成度の高さへの驚きの反応が多かったですね。今観ても、そのパイロット版映像はよくできていて、僕も大好きです。

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野口:僕はたしか「毛並みの具合の表現がポイントかな」というようなことを言った記憶があるんですが、その「毛並みの表現」やその他、パイロット版から完成版に至る過程でCGでの映像表現も随分変わっていきましたよね。その変化についてちょっと聞かせてもらえますか?

山国:完成版では全体的にすごくリアルになりました。わかりやすいところでは、やはりパイロット版と比較して一本一本の毛の動きが、完成版では相当リアルになっています。他にも、メインキャラクターのヒデヨシの目や背景のクオリティが全く違いますね。CGプロデューサーの豊嶋勇作さん(デジタル・フロンティア)からは、映画の制作途中で「もう前のパイロット版は(恥ずかしい)から人に見せないで欲しい」と何度も言われました。

野口:なるほど。

山国:それと、キャラクターがリアルになればなるほど、動きもごまかしがきかなくなってリアルに表現せざるを得なくなるんですが、その部分でも手抜きは一切していないと思います。

野口:「動き」の部分ではモーションキャプチャーを使用されていますが、それは最初からモーションキャプチャーを使おうと考えてらしたんですか?

山国:音楽をふんだんに作品に取り入れて、派手なダンスシーンを売りにする……という方向性は初期の段階で決まっていたので、どうせならやはり本物のダンサーの動きをそのまま再現して使っていこう、とは考えていました。音楽を担当していただいた石井竜也さんに、ライブで振り付けをやられているダンサーさん達を紹介していただいて、彼らのモーションキャプチャーのデータを取り込んでいます。丁度、デジタル・フロンティアさんがアジアで最大規模のモーションキャプチャースタジオを開設されていて、そこを最大限活用されていました。もちろん、そこには「制作効率」という目的もあったと思いますが。

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