■ぷらちな特別講義
僕は、Flashアニメは第二のマンガになると思っているんです。
かつて、手塚治虫さんのマンガ『新宝島』が出た時、みんな「面白いけど、これなら自分でも書けそう」と、手塚さんのマネをして漫画を書き始めた。そうした中から実際にプロになるやつがたくさん出てきて、マンガという表現が拡大していった。もしも手塚さんのマンガが大友克洋さんのように、素人には真似さえもできそうにないものだったら、多分、マンガはここまで広まっていなかったと思うんです。
たとえば、蛙男さんの作品を見たことのある人は多いと思いますが、たしかに面白いんですけど、絵にしても、技術にしてもそれほど高度なことをしているわけではない。ひとつひとつの作品も短いですから、『ほしのこえ』を見たときと違って、みんな「これなら俺も創れるんじゃないか?」と考えると思うんです。ただ蛙男さんにしても、ラレコさんにしても、センスは群を抜いていますから、あの水準ものを作るのはとても難しいんですが、見た目は誰にも作れそうに見える。これがすごく重要なことです。センスや個性で勝負が出来る世界だということですから。技術的な敷居も低い。Flashを作るためのソフト、Macromedia Flashは、パソコンについての詳しい知識がない人でもすこし練習すれば簡単に使えるようになるソフトです。
だから、映像やウェブの畑だけじゃなく、学生や、まったくのアマチュアを含めて、いろんなところから人が参入してくることになった。漫画家やイラストレーターを本職にしているも多い。たとえば、「吉野の姫」という有名なFlashアニメを作った丸山薫さんなんかがそうですね。彼女は、もともとプロのイラストレーターとして活動していた。「吉野の姫」は最初、マンガとして描く予定だったらしいんだけど、たまたま「JAWACON」に出品してくれという話を受けて、Flashとして作ることにしたわけです。
あるいは「やわらか戦車」のラレコさん。キャラクターを作るセンスが抜群にすごい方ですが、もともと漫画家を目指してアシスタントをしていたそうです。だけど、なかなか漫画家デビューできそうになくて、どうしようかと思って試しにFlashを作ってみたら、それが大成功した。ラレコさんには今「やわらか戦車」のマンガ化の話が来ているらしいんですよ。今後はもしかしたら、Flashアニメがきっかけで漫画家としてデビューする人が増えてくるかもしれませんよ? 丸山薫さんも、現在では、講談社のウェブコミックサイト「MiChao!」で作品を発表していますしね。
いうなれば、Flashは新たな自己表現のツールになろうとしてるんです。いろんな分野、いろんな人の個性が生かせるメディアです。そこから新しい才能、新しい表現が生まれてくるんじゃないかと期待しています。