ホッタラケに出来ない!Production I.Gが挑むCGアニメーションの新境地
講義の後半では、学生からの質問を中心に、テクニカルディレクターという立場から映像制作に関わった小松さんに『ホッタラケの島』の映像を作りだした技術について伺いました。
■CGの中に光る、I.Gアニメーションのクオリティ
――まずは『ホッタラケの島』で「ここを見てください!」という部分はどこですか。
小松 今までの3Dアニメーションはモーションキャプチャーがメインなんですが、『ホッタラケの島』ではモーションキャプチャーを一切使わずに、全て手付でアニメーションを付けています。やはりI.Gはアニメーションの会社なので。
――CGを作る際にお使いになったソフトを教えてください。手付ということで特別なソフトを使われたりはしたんですか。
小松 Mayaで3Dのアニメーションを付けてレンダリングして、AfterEffectsで合成するという流れになっていました。
元々外注しないと出来ないサイズだったので、使っている会社が多いMayaを採用することになりました。あと、Mayaのカスタマイズで高機能なキャラクターセットアップ―リギングとも言います―のためのツールを使いました。
Maya以外では特にアニメーションに特化したソフトは使っていません。エフェクトにはRealFlowやHoudiniなどを使ったりしています。
――スタッフの役割分担はどうなっていたのでしょうか。
小松 スタッフというより工程として分業しました。キャラクターモデリング、背景・プロップモデリング――背景と小道具、乗り物とかですね、リギング、アニメーション、クロスシミュレーション、エフェクト、ライティングとコンポジット、テクニカルという具合ですね。
中でもアニメーションは今回、プライマリとセカンダリに分けました。
プライマリはアニメで言う原画的なところで、レイアウトから大きな動きまでを付け、セカンダリでは装飾品や衣服の揺れなどを細かく付けます。なので全部で8、9工程ぐらいでしょうか。
――モーションキャプチャーはゼロとのことですが、ボーン[注:動きをシュミレートするためにポリゴンに仕込む仮想の骨組]はどうなっていますか。体の骨に該当する部分だけでしょうか、装飾品まで入っているのでしょうか。
小松 細かい装飾がいっぱい付いてるキャラとか、セカンダリで必要な骨は大量に入れてますね。
あと、遥の髪の毛は全部骨で揺らしてます。ただ、1本ずつだと大変になっちゃうので、1本でもまとめても動かせるように、リグの方で工夫してあります。
――エフェクトは3Dですか、2Dですか。
小松 ケースバイケースですが、両方使っています。3Dで作ったところもありますし、コンポジットで処理したところもあります。VFX超大作のように派手に派手に、ではなくて、アニメーションを引き立てる効果というのを意識しました。
――では次に、キャラクターアニメーションの勉強をする際に、練習しておくとよいモーションを教えてください。
小松 僕自身はテクニカル担当なので社内のアニメータに聞いてきたところ、これをやりましょうというよりは、色々見た方がいいということでした。アニメーションに限ったことではないですが、より良くするためには実際にどうなのかを見ないといけない。誇張表現にしても、一旦はリファレンスを見て正しく作って、そこから変える方がいいんじゃないかと。
あと、例えば歩き走りとかボールとか、シンプルなところからでもいいんじゃないかという話もしてました。簡単なものでも命を吹きこめるのがアニメーションだと思います。
――映像業界を目指す上で、身に付けると武器になることはありますか。
小松 全体の流れが分かる人の方が、重宝される気はします。その上でやっぱり、自分の得意技を持つことですよね。もし今なくても、探してみればいい。実際僕も、アニメータになりたいものだと思っていたのに、たまたま仕事でプログラミングが絡むことをやったら面白かったんです。そっちが楽しくてどんどん来たら、テクニカルディレクターになっていたんですね。
だから、自分が好きなものを極めて得意技にするといいと思います。
あとはコミュニケーションスキルですかね。映画はすごい大人数で作るので、コミュニケーションが取れないと、工程が分断してロスが出るんです。
――では次に、映像業界にいて「よかったな」と思える瞬間はいつですか。
小松 『ホッタラケの島』が完成した時は「ほんっっとによかった!」と思いました。終わらせられるのかと不安だった時もあったんですが、なんとか完成まで持っていくことが出来て。試写でスタッフが泣いてたんですね。ストーリーも全部知ってるのに、自分たちが作った絵なのに。
完成して初めて作品のパワーが生まれると思うんですけど、それを実感した時はすごい喜びですね。