『Halo Legends』東映アニメーション・西尾大介監督&池澤良幸プロデューサーインタビュー

■描写ひとつに込める意味

――子供たちとの絡みで言うと、「ママ」というのが本作のキーアイデアになっていますね。ここまでのお話では登場しませんでしたが、このアイデアはいつごろ生まれたのでしょう?

「Odd One Out」より

西尾 ふたつのプロットを出した段階で、辺境の惑星の方のプロットにもうありました。ただ、そこは子供の設定と一緒で、ああいう存在が話にそぐわなければ登場しなかったのですが、子供たちが辺境の惑星で生きているバックボーンが欲しいな、と思ったときに、ポンとハマって。やってみないと分からないんですよね(笑)。

池澤 コルタナと「ママ」の関係に、西尾印というか、アクションやギャグの裏にある芯が見えますよね。

西尾 おっ、そうだったんですか。

――(笑)。

西尾 ……意外と恥ずかしがり屋なんです(笑)。

――キャラクターでいうと、1337というのは非常に面白いキャラですよね。一応、優秀な戦士ではあるようなのに、行動はどこか間抜けというか。そのギャップが興味深い。

「Odd One Out」より

西尾 そうなんですよね。いきなりこういうキャラを出して、不自然だと思われるか、面白いと思われるかというのは本当にいつも悩むんですよ。でもやっぱり、真面目で間抜けなやつって、見てて面白いじゃないですか。真面目であればあるほど、間抜けさが面白い。しかもそれで強いというのは、なかなか強力だと思うんですけどね。

――いいところを見せようとすると常にずっこけていると。

西尾 ああ在りたいですよね(笑)。間抜けなやつが努力して道を切り開くというのも、コメディとかギャグを入れながらできると思うんですけど、それとまた違ったパターンで。最初からドジで間抜けで、でも強くて……という確立されたやつは、登場の仕方さえ不自然じゃなければ、そのままで話を引っ張ってくれる。そいつのまわりの方が右往左往すると、そいつはもっともっと努力して、努力すればするほど、コケますからね(笑)。そういうようなテイストで、初登場したら転がっていくように心がけています。

――敵との肉弾戦もかなり勢いがありますね。

西尾 敵役のプルトンを「ウガ」しか言わないキャラにしたので、そこはやっぱりオノレのコブシで決着させたいなと。僕はずっとアクションでは肉弾戦ばかり描いてきたし(笑)。でも初めから銃を捨てて肉弾戦をやるというと不自然なので、最初の出会いのところで圧倒的にやられて、ポーズとしては銃を持っているけれど、そうじゃないと思わせる。私のキャラクターが勝つか、キミのキャラクターが勝つか、というところにまで持っていかないと、なかなか肉弾戦って実現できないんですよね。気持ちをそこまで持っていければ、あとは思う存分コブシとコブシで語らせればいい。その方が体が動かせるので、パワーとか気持ちが乗りやすいですよね。

――キャラクターとキャラクターをぶつけ合うための方法論としてアクションがある。

西尾大介監督

西尾 そうです。アクションというのはそういう面もあると思います。ただ動いてりゃいいという訳でもなくて、僕の意図するポーズだってとってもらわなきゃ困る。ポーズやコブシの出し方、それをちゃんとわかっている絵描きさんがいて、その人たちが存分に描いてくれるということで、やっと描こうとしていたものの”入り口”にみんながつける。カメラが派手に動いたり、枚数かけてすごい動き方をしていたとしても、僕らの殺陣でなければそういうカットは意味がない。こうコブシを出したら、こうやって受けて、だから着地はこうでしょ! という流れを理解しながら描いていくという作業が、アクションシーンの作り方じゃないかなと思います。今回の作品にはないですけど、弾丸の避け方ひとつとっても、そのキャラクターの心的な動機がわかるんです。たとえば、飛んできた矢が胸の前を通り過ぎるように避ければ、一連の動きの中で矢を掴みとれますよね?

――はい。

西尾 拳でも、そう避ければ、相手の拳を掴んで前に出られるんです。頭を下げて避けるのと、その避け方では気持ちが違う。そういう動機を持っているキャラクターだと思って原画の人が描いていれば、狙っていた意図どおりのアクションになると思うんです。……なんちゃって、ちょっと語ってしまいました(笑)。

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