アニメ『コルボッコロ』パイロット版完成!糸曽賢志監督・加藤英美里さんインタビュー

糸曽賢志監督・加藤英美里さんインタビュー 図版

クリエイター支援プロジェクト「動画革命東京」の支援のもと、長編オリジナルアニメーション『コルボッコロ』の制作を手がける映像クリエイター、糸曽賢志さん。ぷらちなでもその舞台裏を連載コラム「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」で披露してくれています。

長編の制作の足がかりとなる30分のパイロット版『コルボッコロ』が完成したことをうけて、糸曽監督と、主人公・鈴と、物語の鍵をにぎる不思議な生き物、コルボッコロを一人二役で演じる声優の加藤英美里さん(『出ましたっ!パワパフガールズZ』赤堤ももこ役、『らき☆すた』柊かがみ役など)にお話をうかがいました。

――はじめに、『コルボッコロ』という作品が生まれたきっかけはどういうものだったんですか?

糸曽 『コルボッコロ』という企画を僕が最初に思いついたのは、まだ十代のころでした。そのころ、『新世紀エヴァンゲリオン』みたいな中高生向けのカッコいいアニメは多かったんですけど、ハウス名作劇場みたいな感じの家族全員で楽しめるようなアニメが少なかったんですね。なので、「カッコよさ」とは違うところで勝負できる作品をやれないかな、と。それが最初に思いついたきっかけでしたね。

糸曽監督

――もともとアニメを作りたい、という意識があったんですか?

糸曽 いえ、以前のインタビューで詳しくお話したんですが、むしろマンガ家になりたかったんです。描いたマンガが編集さんの目に留まって、ネームを見てもらっていた時期もあったのですが、その後入学した美術大学で講師をされていた、木船徳光さんの映像プロダクション「IKIF+」に所属することになり、東小金井村塾で宮崎駿さんに出会って……と色々あって、いつのまにか(笑)アニメの演出家になっていました。

――『コルボッコロ』の世界観には、そうした紆余曲折の中で培われた糸曽さんのエンターテイメント感覚がよく現われていると思うのですが、この発想のルーツはどこにあるのでしょう?

糸曽 まずは、今の日本みたいに自然と普通に共存していた街が、いったん科学の力によって自然がなくなってしまって、なぜか雲の上に植物だけがある状態になっている……というよくわからない世界観を作りたい、という意識と、出てくる街並みには色々な宗教の起源になった街、というような雰囲気を持たせたいという意識がありました。

――序盤で、勉強をしたくない主人公の鈴が、家庭教師の先生に逆質問してやり込める場面のようなコミカルな描写に「糸曽流」を感じたのですが、その点は演じられた加藤さん的にはいかがでしたか?

加藤英美里さん

加藤 日常では当たり前すぎて疑問にも感じないようなことを疑問に思う鈴にハッとさせられることが多かったです。そのあたりでは、すごく色々な物に興味を持つ子なのかなぁ、と思いましたね。

糸曽 そうなんですよ。それは多分、僕が普段考えているようなことを、鈴に投影しているところがあるからなんだと思いますね。屁理屈こねるのが好きなんですよ(笑)。

――鈴役に加藤さんを選ばれた決め手はなんだったんでしょう?

糸曽 14歳の女の子の声に聞こえることと、なるべく自然体に演技が出来ること、と言うのが声を選ぶときの基準でした。81プロデュース(加藤さんの所属事務所)さんにサンプルを用意していただいた中でまず気になったのが加藤さんの演技だったんですが、そのあと一度お会いしてみたら、まさに普通に喋っている感じでそのまま演技してもらえそうな方だったんですよね。結果的にもすごくうまくはまって、映像を編集していたときに、脚本にセリフは入れてないけれど、絵だけだとちょっと持たないんじゃないかな、と思えるシーンがいくつかあったんですけど、そこに上手いアドリブをあててくれて。そのおかげで、すごい画面がもつ感じになったんですよね。

糸曽監督

加藤 キャラクターが動いているときの息づかいとか、やっぱりあったほうがいいなぁと思うんですよ。その方がキャラクターの動作としても自然で、演じている方もやりやすいので。だから「ここは入れたい」と思うところは勝手にいれるようにしていますね。

糸曽 そういったプロの技には本当に感動しました。こういう箇所に声が入るとこういう効果がでるんだな、ということが演じてもらうのを見せてもらう中でとても勉強になりましたね。

――コルボッコロと鈴の一人二役になった理由はどんなところに?

糸曽 名前とか経歴とかをいっさい見ずに声だけ聞いて判断したとき、たまたま鈴の声で一番いいと思った人と、コルボッコロで一番いいと思った感じの方が両方とも加藤さんだったんですよ。もちろん、メインキャラのキャストが兼役だと変な感じするんじゃないかと思って迷いはしました。でも考えていく中で、逆に30分という短時間のアニメの中で、2人が心を交流させて旅に出る、というところまでを描かなければならないんだから、同じ人がやった方が分かり合う感じが割とすんなりくるんじゃないかな、と思ったんです。

コルボッコロ図版

――加藤さんは一人二役は初めての経験でしたか?

加藤 メインのキャラクターで一人二役って言うのは初めてですね。

――主役キャラを両方、というのも珍しいですが、人間の言葉を喋っていない自分と掛け合いをするというのも、面白い経験だったのではないかと思います。

加藤英美里さん

加藤 鈴の方で言葉を投げかけるとき、どんな気持ちを込めていたかというのが自分で分かっているので、そこにどういう感情で応えたいのかもわかりやすかったんですね。だから、すごくやりやすかったです。

糸曽 実はコルボッコロってどんな声を出すのか、作っていた僕にも半分くらいわからないところがあって(笑)、加藤さんに「鳴き声考えてください」といったんですよね。困ったんじゃないかな、と思ったんですが。

加藤 いやぁ、本当にすごく悩みました(笑)。見た目は植物だし、どう鳴くんだろうって。「あーっ」って言うだけじゃ、ちょっと感情の表現に限界が有るかなと思ったり、なにかコルボッコロらしさというのがあった方がかわいいんじゃないかな、と思ったりもして。最終的に「こるぅ」とか「こるるぅ」って言う風に鳴くようにしました。見た目もまるっこい感じですしね。

糸曽 今おっしゃった、「コルボッコロらしさ」っていうのをすごく大事にしたいと思っていたんですが、それが本当によく出た鳴き声だと思ったんです。ここでも、声優さんのすごさを実感できましたね。

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©Kenji Itoso/コルボッコロLLP





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