小学館ガガガ文庫編集部 ―ライトノベル文庫誕生の瞬間に迫る―

ライトノベル&イラストレーション

■ガガガ文庫のイラストレーターが決まるまで

ライトノベルにとって、そのイラストも欠くことができない大切な要素です。新たなレーベルであるガガガ文庫のラインアップを彩るイラストレーター達は、どのように選ばれたのでしょうか。

編集M:例外はもちろんありますが「まずは物語ありき」。小説のプロットが固まり、雰囲気が固まり、執筆に入った段階で、はじめてイラストレーターさんはどうしよう、という話になる。

コミティア
パロディなど二次創作が主流の同人誌即売会とは異なり、作家のオリジナル作品に限定した展示即売会。

イラストを選ぶ基準ですが、小説ですから老若男女、色々な人、色々な場面を描いてもらうことになります。そうすると僕の中では“絵の幅が広い人”というのが優先されるんですよ。イラストレーター探しに、コミケやコミティアなどのイベントに出かけていって同人誌を買ったりもするんですが、女の子だけしか描かれてないと、はたしてこの人は、女の子以外描けるのかどうか、判断ができないんですよ。そうするとどうしても依頼するのを躊躇してしまう。もちろん、とびっきり可愛い女の子だったらまた話は別ですが(笑)。

編集G:僕は三坂さん(第二回・MF文庫J編集長)と同じくネットがイラストレーター探しのメインでした。持ち込みにくる人、というのは限られていますから、昔はコミケのような同人誌即売会に出かけないといけなかったんですが、それは結構時間がかかるので、そうすると仕事の合間にチョコチョコと机に向かって探せるネットの方がありがたい。イラストレーター志望者の方は、ウェブサイトを持つというのが第一歩だと思いますよ。

編集Y:レーベルというものは、続けていくうちに経験則としてこういうイラストが売れる、売れないというのがわかってくると思うんです。もちろん私たちもそうした情報を見聞きしてはいます。しかし既存のレーベルさんの情報を参考に考えていくと、おそらく安定する一方、冒険もしにくくなる。当然ながら我々は「創刊」ですので、そういった自分の身をもって得た失敗や成功の蓄積がまだまだ少ない。ガガガ文庫の良いところでもあり悪いところでもあるのは、現時点においては制約が少ないということです。「これはダメ」と読者から目の前に突きつけられていない。実績がないわけです。読者あってこそのレーベルですから、本を出して売れるのか売れないのか、読者のみなさんに問うということをしていかないとわからない部分は大きいです。ですから、小説と同じく、今後も試行錯誤を繰り返していくことになるはずです。

ぼくらの~alternative~(1)
(amazon)

ぼくらの~alternabive~

原作・イラスト:鬼頭莫宏
著:大樹連司

ハヤテのごとく!(amazon)

築地俊彦『ハヤテのごとく!』

原作・イラスト:畑健二郎
著:築地俊彦

湯浅『ハヤテのごとく!』『ぼくらの』という2つのノべライズに関しては、原作のマンガ家さんにカバーはもちろん、中のイラストまで含めてお願いしています。

イラストレーターには、新人賞以外にも出版社への「持ち込み」をすることでチャンスが開けることがあります。もちろん、多くの出版社同様に、ガガガ文庫でも作品の持ち込みを受け付けています。自分の描いたイラストを、編集者に認めてもらうために必要なこととはなにか、教えていただきました。

編集Y:ガガガ文庫に限らない一般的、基本的なことから言いますと、「ライトノベルを読んだことがありますか?」と聞くと「全く読んだことがない」という人も中にはいる。ライトノベルのイラストを描きたい、というのであれば、何冊か、実物を手にとって、どういうイラストが求められるのか、マンガや美少女ゲームのイラストとは何が違うのか、ということを考えて欲しいですね。

編集M:もちろん、編集者にとってそれぞれ違うとは思うんですが、やはりイラストレーターさんでも、活字文化への理解があると打ち合わせもやりやすいですね。たとえば「この作品は、横溝正史みたいなテイストで」といったときに「ああなるほど『獄門島』ですか」と言ってもらえると、とてもスムーズに仕事ができる。

湯浅:もうひとつ、編集者の意見にも柔軟に耳を傾けて欲しいんです。編集者には編集者の視点というものがありますから、色々と注文をつけて、イラストを手直ししてもらうということは、少なくありません。

「編集者の言いなりになると、自分の個性が消えてしまう」という心配をする人がいますが、本当の個性というもののは、こちらの注文にあわせたとしても、絶対に残ってみえるものです。

編集Y:持ち込みで「いや、ちょっと……」と言われてしまっても、落ち込まないで欲しいんです。そこで言われたことを踏まえてまたチャレンジするなり、カラーの違う別の出版社に行くなり、チャンスは他にいくらでもある。たとえば新卒で就職活動をするとなれば、みんな10社とか20社とか受けますよね。それと同じことですから。あきらめないことも大事だと思います。

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