連載第五十三回「トランスフォーマー アニメイテッド」

皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。

サクラが満開の季節になってまいりました。皆様はお花見には行かれましたか?

ボクは東宝スタジオでのお花見にご招待頂き、ライトアップされた桜を楽しんできました。

たまたまいらっしゃっていた樋口真嗣監督に久しぶりにお会いし、新作の情報などを教えてもらったりとなかなか有意義な時間を過ごせた気がしています。

最近は別件で犬童一心監督とお仕事をご一緒させて頂いているのですが、このお二人、現在「のぼうの城」という時代劇映画を共同監督で制作されているので、なんだか同時期に両方からタイムリーなエピソードを聞けて不思議な気分。

さてさてそんな中、4月よりテレビ東京系他でボクが数年前に絵コンテ&演出で参加させて頂きました「トランスフォーマーアニメイテッド」が放映されるようです。

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実写版ハリウッド映画の『トランスフォーマー』と同時に制作された作品で、登場キャラやエピソード等も微妙にリンクしていたり。

実写版が大人向けなので、アニメは子供向けを目指し、かつ日本のようなリミテッドアニメで行きたいというのがアメリカ側からの要望だったので、そういったことを意識しながら作業していたのを覚えています。

ちなみに「リミテッドアニメ」というのは、3コマおきに絵を差替えたりするアニメのこと。簡単に言うと昔のディズニーみたいにフルアニメーションではなく、止め絵も活用したアニメってことですね。

日本のテレビアニメと思っていただければ大丈夫かと思います。

ロボットから車への変身シーンをどういう風にするか色々悩んだ気はしますが、意外とごまかしつつそれっぽくなるように描いた気が。

ボクの担当回はカーチェイスや、ミサイルが飛び回ったりするシーンが多かったので、板野サーカスまがいのカットやらアキラっぽいカットやらを出資者の希望で入れ込んみました。

なので、そういうのが好きな方には楽しんでいただけるかも。

英語圏では視聴率1位だったようですが、日本ではどうなることやら。

ひとつ気になることと言えば、英語用に制作した口パクに日本語をどう合わせたのかということ。

英語は舌を使って発音するので、日本のような三枚口パクではなく、もっと複数の種類の絵を使用して喋りを表現しているのです。

日本で放映することになったら、口パク全部修正かもね~なんて聞いていたので、どうなったのかなあ、と。

制作時は、正月潰して作業していたのでテンパってましたが、完成後、本編劇中に大きく名前が出てた時は、なんだか嬉しかったです。

すこしいやらしい話をさせて頂くと、海外資本作品は制作費も高いので演出のギャラも国内ものより良いと、この作品に教わったりもしました。

そのぶん、大変なんですけどね……。

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アクションシーンも多いので動きも大きいし、脚本もハリウッドテイストなので、謎解き要素なんかもたくさん詰め込んであった気がします。

そういう意味では、ロボットものも初めてだったし、とても勉強になった作品でした。

少女とロボットたちの交流なんかもあって、体の大きさの違うロボットと少女をどうやって会話させるかとか普段考えないことに目を向けるきっかけになりましたし。

何回か、カートゥーンネットワークの監督さんがいらっしゃっていて、席が隣だったのでぎこちないながらも英語で会話しつつ、向こうの状況なども聞けたのも、海外資本作品ならではの経験でした。

何にしろ、色々な経験をしとくとネタになるかと思いますよ。

動画枚数もわりと多めに使えた作品だったし、ちょっと趣向の違う海外アニメもたまには良いかななんて思う方がいれば、是非ご覧になってみてはいかがでしょうか。

ひょっとしたら、いつもとは違う気分を味わえるかも??

お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば幸いです。

では皆様、またお会いしましょう。

いとそ けんじ

トランスフォーマーアニメイテッド公式サイト(http://www.takaratomy.co.jp/products/TF/products/animated/)


糸曽 賢志(いとそ けんじ)
糸曽 賢志
1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。 20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。 大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。 現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。 2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に 取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。 文化庁新進芸術家国内研修員にも認定され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008で北海道知事賞、第7回東京アニメアワード企業賞を受賞するなど、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
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糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)

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