■連載第五十四回「Room 305」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。
糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
なんだか、少しづつ暖かくなってまいりましたね。
ボクのほうは、相変わらず劇場アニメ『夢みる機械』の作業に追われる日々です。
以前ここでもふれましたが、今年はじめにマッドハウスさんが引越しまして、だいぶ新スタジオにも慣れてまいりました。
最初のうちは、ぼーっとしてるとうっかり前のスタジオに向かって電車を乗り継いでいたりなんてこともあったのですが、今ではすっかりそんなこともなくなっております。
ボクは現在、この映画作品の公式ブログもなぜか担当させて頂いているのですが、監督の今敏さんから「糸曽くんの宣伝にも使っていいよ」という有難いお言葉を頂いたので、そちらも好きに書かせて頂いております。
さてさてそんな中、別の作品も制作したのでご紹介させて頂こうと思います。
昨年末に、スタジオ引越しのため長期休暇を取れそうだったので、その期間を利用して制作した5分ほどのミュージッククリップです。
曲名は『Room 305』、アーティストはdorlisさん&土岐麻子さん、レコード会社はエイベックスです。
短期間、少人数で出来て、今までやっていないことに挑戦しようということで、紙アニメをやってみようと思い立ち、全部手作りで制作することに。 東急ハンズや布屋さんに行って、紙やスチレンボードや生地などを買ってきて、ボクを含めて三人のスタッフで黙々と工作作業。
アーティストさんの所属事務所の方に、空いている部屋をお借りして作業していたのですが、引き篭もっていたので途中で頭がおかしくなりそうでした。
ただ、その方がハリネズミを飼っていらして、そのおかげで随分と癒されたのを覚えています。
「ハリボー」という名前の彼は、決して人になつかないと聞いていたのですが、なぜか仲良しになれたので、なんだか嬉しかったです。
撮影用のセットはテーブル一杯になるくらいの大きさで組んで、小物を制作して配置し、壁にかける絵などはイラストレーターで作成しています。
2種類の部屋を作成する必要があったので、結構な数の家具を写真とか見ながら制作したのを覚えています。
照明は豆電球を買ってきて行ったり、学研のプラネタリウムやらオーロラ作成機やらを買ってきたり。
完全に夏休みの工作のノリで作っています。
思ったより時間もかかって、締切間際はスタッフ間の仲が相当悪くなっていましたが、出来上がってみると何とも思い出深い作品になった気はしています。
撮影はCANONの「EOS 5D」を使用。
最近は、へたなビデオカメラより、デジカメの方が画質も良いんですよね。
唯一の問題点は、音声をうまく収録し辛いことなのですが、ミュージッククリップの場合は曲を使用すれば良いので音は関係ないし、今後デジカメでの撮影が主流になる気はしています。
dorlisさんの歌ってる実写パートは、ベニア板をペンキで赤く塗り、電球やら造花をぶら下げています。
今回はスタジオは借りず、普通に部屋で撮影したので、照明なども家庭用のもので賄いました。
自分で言うのもなんですが、意外とそれっぽく撮れている気はするので、お金なんてかけなくてもがんばりゃ何とかなるものだと学びました。
ほとんど自分たちで作ったおかげで、材料費ぐらいしかかかっていないので、利益率としてはかなり良い結果になりましたし、こういう制作手法も悪くないかもとは思ったり。
そんな『Room 305』ムービー視聴はこちら。
アルバム『swingin’ street 4』を購入すると、特典でこのPVも付いてくるので、ご興味をお持ちの方は是非手元に置いて頂ければと思います。
お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば幸いです。
では皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
⇒劇場アニメ「夢みる機械」公式サイト(http://yume-robo.com/)
⇒劇場アニメ「夢みる機械」公式ブログ(http://yumemirukikai.jugem.jp/)
⇒「Room 305」ムービー視聴(http://www.youtube.com/watch?v=lXRLn_KX7K0)
⇒『swingin’ street 4』をamazonで見る
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008で北海道知事賞、第7回東京アニメアワード企業賞を受賞するなど、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)